2021年度も前年度に引き続き、様々な次元の場の量子論における対称性とそのアノマリーについて研究を行った。 - 4次元ゲージ理論 : 非局所的な演算子が荷電した高次対称性と通常の対称性との間の混合について、前年度までの議論が抱えていた問題点を遂に解消し、整合的な解釈を得ることに成功した。 - 共形場理論 : 場の量子論はくりこみ群の固定点で (定義から) スケール不変になっているが、このスケール不変性は一般に共形対称性へ拡大することが知られている。本研究では、共形対称性を有する場の量子論における (特に連続的な) 高次対称性に着目し、時空の次元によっては高次対称性のカレントが共形対称性およびユニタリー性から課される条件を満たさない場合があること、ひいては高次対称性の存在がそもそも禁止される場合があることを明らかにした。またこの結果を用いて、種々の理論の高/低エネルギー極限としてあり得るシナリオについても考察し、特にスケール不変性が共形対称性に拡大しないケースについて新たな知見をもたらした。 - 8次元超重力理論 : 超弦理論を適当な多様体上でコンパクト化することで、色々な高次元の場の量子論が得られるが、素朴にはアノマリーを持ちうるゲージ対称性が発現する場合があり、場の量子論の観点からは理論の整合性は必ずしも明らかではない。本研究では、ボルディズム群を用いてゲージ対称性のアノマリーが相殺する機構を解析し、コンパクト化に使われる多様体に非自明な制限がかかる場合があること等を見出した。
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