本年度は前年度までに開発した三次元透過電子顕微鏡(TEM)解析法を,カーボンナノホーン(CNH)上に担持された有機分子のTEM観察へと適用した.まず対象となる有機分子をCNHへと共有結合で担持させるための修飾CNH(分子釣り針)を開発し,原子分解能を有するTEM観察により実際に対象分子がCNH上に固定されることを確認した.次に観察対象分子に対して複数のマーカー原子を導入し,同様の手法で修飾CNHへと担持した.TEM観察および開発した三次元解析法によって対象分子に含まれる個々のマーカー原子の三次元位置情報を得ることに成功した.得られた位置情報と分子モデルおよびTEMシミュレーションとの比較により,観察された分子のコンフォメーションが既知構造より推定されるコンフォメーションの一つと一致することが分かり,本研究課題で開発した三次元解析の妥当性が確認された.最後に,得られたマーカー原子の三次元位置情報を元に,マーカー原子を含む対象分子と担体であるCNH先端部から成る系について,絶対配置を決定した.複数のTEM像に対して同様に絶対配置の決定に成功し,本手法の適応可能性を見極めた.
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