研究課題/領域番号 |
19J22365
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
家入 祐也 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 意思決定支援システム / モバイルコンピューティング / 都市空間 / シミュレーション / 感性情報 |
研究実績の概要 |
スマートフォンやセンサデバイスの技術向上によって,多様な性質や粒度を持つ多次元なデータの収集が可能になり,この多次元データの分析によって様々な意思決定支援が取り組まれている.しかし,従来取り扱われてきた多次元データには,取り扱いが難しいが人の意思決定に大きな影響を与えうると考えられる,人の感性情報は考慮されていない.そこで本研究では,感性情報の定量化とエージェント技術による意思決定支援の自動化によって,複数の感性情報を考慮したアンビエントな意思決定支援システムの構築を試みる.特に本研究では, ICT技術を用いたデータ収集に加え,アンケート調査やフィージビリティスタディによるデータ収集を行い,感性情報を考慮したテンソルデータ分析による意思決定支援システムの構築に取り組む.本年度の主な実施内容として,下記に3点をまとめる. (1)観光回遊行動時における感性情報の収集と定量化: 観光客の感動の度合いに関するデータを収集することによって,観光客の感興度を定量化した.そのようにして収集されたデータを用いることで,偶発的観光資源の発掘手法を構築した. (2)商業地域における感性情報に着目した意思決定支援:顧客の嗜好と店舗の印象に着目した消費者行動モデルを構築した.そして消費者行動モデルを用いたシミュレーション結果と,ウォークラリーアプリケーションを用いた消費者の行動ログ収集結果を比較することによって,商業地域において,ポイント付与というインセンティブがどのように働くかを明らかにした. (3)Augmented Reality(AR)技術を用いた誘導時における感性情報を利用した意思決定支援:AR技術を用いた誘導時における戸惑いを考慮した行動モデルを構築し,誘導時における人の戸惑いを解消するための要求条件についてまとめ,AR誘導アプリケーションの開発環境について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,感性情報の定量化とエージェント技術による意思決定支援の自動化によって,複数の感性情報を考慮したアンビエントな意思決定支援システムの構築を試みている.本年度は採用1年度目にあたり,観光地及び商店街を実験フィールドとして,研究課題の注目対象である感性情報及びそれに付随する多様なデータを収集した.これらの収集データを分析することにより,実社会ベースでのユーザ支援に注目したツールを構築し,実験からその性能や利用特性を評価した. 以上の取り組みによって,感性情報に着目した消費者行動モデルを検討し,商店街(商業地域)におけるポイント付与効果を分析し社会実験でこれを評価した. さらに,観光回遊行動における感興度を定量化するための手法を構築した.これらは,初年度予定していた感性情報の定量化と意思決定支援の実践を達成しており,おおむね予定通りに研究が進捗した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果によって,観光回遊行動における感興度の定量化手法の構築が達成された.そこで今後は,定量化された人の感興度に着目し,観光地における感性情報を考慮したテンソルデータ分析による意思決定支援の仕組みを構築する.本目的を達成するために,ICT技術を用いた実証実験やアンケート調査,フィージビリティスタディ,を京都で実施し,多様な粒度の異なるデータを考慮したテンソルデータを収集する.そして収集されたデータを用いて,観光地における人の感興度に着目した意思決定支援の仕組みを構築し,実社会で実践する. さらに,商業地域における感性情報に着目した意思決定支援システムをエージェント技術によって自動化し,複数の感性情報を考慮したアンビエントな意思決定支援システムの構築を試みる.得られた結果をもとにして, 観光地・商業地域・ARを利用した誘導時,などの多様なフィールドでの感性情報に着目した意思決定支援の仕組みの構築と実社会での実践を統合して分析する.これによって,高次元なデータと感性情報を利用した意思決定支援システムのためのフレームワークを構築し,実社会で適用可能な産業振興モデルを確立する.
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