研究実績の概要 |
ホウ素触媒がカルボン酸を選択的に活性化し、温和な塩基性条件下にエノラートを生成するという知見に基づいた本研究であるが、ホウ素触媒が水やアルコールのような活性水酸基に対してきわめて脆弱であり触媒毒としてホウ素を不活化してしまうという問題があった。水やアルコール中で反応を行えることがラジカル反応の大きな利点の一つであるため、このホウ素触媒の脆弱性を解決できなければメリットが大きく低減してしまう。 そこでまず、アルコールなどの活性水酸基存在下、ホウ素触媒によりカルボン酸を選択的に活性化する手法の開発を目指した。特にモデル反応としては、アルコキシドが系中で生成してホウ素触媒に強く配位することがわかっているカルボン酸直截的アルドール反応を選択した。 すでに、当研究室では当量ホウ素触媒、およびその配位子を用いることで化学選択的かつジアステレオ選択的なアルドール反応の開発に成功している(OL, 2016, 18, 2276)、しかし触媒化は前述の理由により困難であり極めて限定的な基質でのみ進行している。 種々の検討の結果、精緻な反応系の設計により所望のアルドール反応が触媒的に進行した。さらに配位子についても詳細な検討を行った結果高いジアステレオ選択性及びエナンチオ選択制を発現することに成功した。基質一般性についても検討を行ったところ極めて広い一般性を示し、ケトンやエステルなどの存在下でもカルボン酸選択的に反応が進行した。またアルデヒドは芳香族以外に、容易にエノラート化しホモアルドールが進行することが知られている脂肪族アルデヒドについても適用可能であった。現在ペプチドを含むさらに複雑な基質への適用を検討中である。
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