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2019 年度 実績報告書

多様な骨格筋萎縮シグナルを統合する新たな制御因子の探索とその分子メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19J22409
研究機関東京大学

研究代表者

久保山 文音  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワードTmem100 / 骨格筋 / 萎縮 / 炎症 / DNA分解 / dexamethasone
研究実績の概要

本研究では、多様な筋萎縮条件下の骨格筋細胞で発現上昇することを見出した膜タンパク質Tmem100について、発現調節機構や筋萎縮時の機能解析に取り組んでいる。
【骨格筋Tmem100の発現制御機構の解析】これまでに、非骨格筋細胞を用いた実験によりカルシウムシグナルの活性化に伴いTmem100の転写が亢進することを明らかにしてきた。骨格筋でも同様の現象が見られるかを確かめるため、培養骨格筋細胞やマウス骨格筋にカルシウムシグナル誘導剤を処理しTmem100の発現レベルを解析したが、有意な変動は生じなかった。したがって、骨格筋Tmem100の発現誘導には他の経路が重要であると結論付けた。これを受け、筋萎縮時に惹起される様々な刺激に注目した結果、合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンを処理した培養骨格筋細胞でTmem100のmRNA量が増加することが明らかとなり、筋萎縮時の発現誘導にグルココルチコイドシグナルが関与することが示唆された。
【筋萎縮時のTmem100の機能解明】これまでに、生体組織にプラスミドを導入するin vivoエレクトロポレーション(EP)法によりマウス骨格筋にTmem100を過剰発現させると、炎症マーカーの発現が低下することを見出していた。そこで、Tmem100が炎症シグナルを抑制すると予想し培養骨格筋細胞を用いた検証に移行したが、培養骨格筋細胞にTmem100を過剰発現させても炎症応答性に変化は認められなかった。その後、in vivo EP実験のTmem100発現群の骨格筋ではプラスミド由来の外因性遺伝子の発現量が著しく低いことが判明し、プラスミド分解が亢進していることが示唆された。一般的にDNAが細胞質に存在すると炎症が誘導されるため、Tmem100過剰発現骨格筋で見られた炎症マーカーの発現低下はプラスミド由来DNA断片の分解促進に伴って生じたと推察される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Tmem100による炎症抑制効果について、当初推測していた炎症シグナルの抑制ではなくDNA分解促進を介して発揮されているという新たな可能性が示され、実験方針に変更を加えながら想定を超えて研究を発展させることができたため。

今後の研究の推進方策

【筋萎縮時のTmem100発現調節機構の解析】
生体骨格筋においてもTmem100がグルココルチコイドシグナルによって制御されることを確かめるため、マウス骨格筋へのデキサメタゾン投与実験を行う。また、グルココルチコイドシグナル伝達に関与する転写因子のノックダウンの実施または阻害剤の使用によりTmem100の発現を直接制御する因子を解明するとともに、Tmem100プロモーター上の重要配列の同定を試みる。
【骨格筋Tmem100の機能解析】
Tmem100がDNA結合能を有する可能性を検証するため、Tmem100を過剰発現させた培養細胞にビオチン化オリゴDNAを導入し、ストレプトアビジンビーズを用いたプルダウンアッセイを行う。また、TUNEL染色などを用いたDNA断片の染色により、Tmem100にDNA分解促進作用があるかどうかを確認する。Tmem100が骨格筋でDNA分解促進作用を持つ生理的意義としては、筋萎縮により生じる不要なDNA断片の蓄積を防ぎ、それによって過剰な炎症応答を抑制して筋細胞の機能を維持させることが考えられる。今後は、筋萎縮モデルマウスにおいてTmem100をノックダウンし、炎症誘導の程度や筋萎縮状態からの回復を評価していきたいと考えている。また、現在作製を検討している骨格筋特異的Tmem100ノックアウトマウスを用いた解析も順次行う予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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