本研究では、多様な筋萎縮条件下の骨格筋細胞で発現上昇することを見出した膜タンパク質Transmembrane protein 100(Tmem100)について、骨格筋における発現制御機構や機能の解明を試みた。まず、発現制御については、筋萎縮時に亢進するシグナル経路との関連を探った。培養骨格筋細胞C2C12を用いた評価系では、Tmem100の発現制御を担う経路としてグルココルチコイドシグナル等が候補として推定されたが、生体骨格筋でTmem100の発現を制御するシグナル経路や因子の同定には至らなかった。今後、Tmem100のプロモーターに結合する転写因子の候補を絞り込むことで、発現制御機構が明らかになることが期待される。 機能解析では、in vivoエレクトロポレーション(EP)法を用いてマウス骨格筋にTmem100を過剰発現させると炎症関連遺伝子の発現が低下することを発見した。この時、プラスミドを導入せずEPのみを行った骨格筋では炎症反応が誘導されないことから、本実験で見られる炎症はプラスミドの導入によるものであり、Tmem100がプラスミドの分解あるいは細胞外への排出を介して炎症を抑制していることが示唆された。本年度は、マウスを用いたin vivo ルシフェラーゼアッセイの結果から、生体骨格筋に導入したプラスミドがTmem100によって経時的に分解されることを明らかにした。詳細なメカニズムや生理的意義は不明であるが、Tmem100が細胞内で外来性DNAとして認識されるDNA断片(ミトコンドリアDNA等)の感知や細胞外への排出に関与している可能性が示唆される。今後、骨格筋特異的なTmem100ノックアウトマウスを作出することでより詳細な解析が可能となり、骨格筋の恒常性維持につながる新たな分子メカニズムが明らかになることが期待される。
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