優れた力学強度を持つセルロースナノファイバー(CNF)は、軽量構造材に適用可能なポリマー補強材としての応用が期待されている。しかし、構造材料として使用するのに十分な厚みの高強度ポリマー複合体を得ることは困難であった。そこで本年度では、前年度までに得られた、大規模化が可能なCNF多孔体(キセロゲル)をテンプレートとしてポリマー複合体の調製を試みた。ミリメートル厚のCNFキセロゲルにメタクリル系モノマーを含浸させ、UV硬化することでCNF/ポリマー複合体を得た。得られた複合体は、広いCNF含有量で高い光透過性を示した。また、複合体の厚みと光透過性の関係を解析した結果、複合体中ではCNFが凝集することなく分散した均質な構造を持つことが示唆された。この微細なCNFネットワークはポリマーを効果的に補強し、曲げ試験における弾性率・強度・破壊仕事が大きく向上した。また、CNFの添加により、複合体の線熱膨張係数が最大78%低下した。さらに、可燃性のポリマーにCNFを50%以上添加した複合体では、優れた難燃性が確認された。以上の結果より、CNFキセロゲルが厚みのある多機能性ポリマー複合体のテンプレートとして適用できる可能性が示された。 以上の結果について、セルロース学会第28回年次大会において発表を行った。また、以上の内容を取りまとめ、論文を執筆、投稿した。論文は、Nanomaterials誌に掲載された。
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