研究実績の概要 |
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 重水中、白金炭素(Pt/C)存在下、Pt触媒を活性化するための水素源としてトリアルキルアミンに代えてベンジルアミンを添加してアリルアルコールを重水素化するとオレフィン部位の還元を10%以下に抑えつつ高い重水素化率のアリルアルコールが生成した。この反応ではベンジルアミンは、Pt/C触媒的に脱水素されてイミンやベンゾニトリルに変換されることも確認した。申請者の研究室では、アクリル酸ナトリウムなどの水素アクセプターの添加により、同in situで生成する水素をトラップして基質分子内に共存するアルケンの接触水素化を抑制する方法を確立している(Green Chem., 2018, 20, 1213.)。これを利用して、アクリル酸ナトリウムを添加したところ還元体の副生を5%以下まで低減できた。 [2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : Pt/カーボンビーズ(CB)を充填した触媒カートリッジに、基質の2-プロパノール(2-PrOH)/重水混合溶液を送液すると、触媒層を通過する僅か60秒程度で芳香環に効率良く重水素が導入されることを見出した。カートリッジ内では、Pt/CB触媒的に2-PrOHから脱水素して発生した水素がPt/CBを活性化し、カートリッジ内で基質が、活性化されたPt/CBと効率良く接触するため、短時間で重水素標識反応が進行する。また、Pt/CBの単独使用では重水素標識が困難な基質も存在した。この場合にはPt/CBとパラジウム(Pd)/CBを混合してカートリッジに封入することで共触媒的相乗効果を発現させることで重水素化効率の向上に成功し、広範な基質一般性を示すことができた。なお、サリチル酸溶液を触媒カートリッジに長時間連続送液した場合にも、少なくとも12時間は触媒の劣化や失活が認められず高い重水素化率を維持できた。
|