研究課題
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 令和元年度の検討で第三級アリルアルコールを基質として、10% プラチナ(Pt)/炭素(C)触媒存在下、アミルアミン(水素源: 3 当量)とアクリル酸ナトリウム (水素アクセプター: 2 当量)を重水中、120 ºCで24時間加熱攪拌すると、アルケン部位が90%程度選択的に重水素標識されることを見出した。重水素化率の向上を目指して反応条件を検討した結果、水素アクセプターをアクリル酸メチルに変更して、メチルシクロヘキサンを共溶媒とすることで、重水素化率と収率が大幅に改善された。現在、様々なアリルアルコール類の基質適用性を検討しており、ビタミンEの合成中間体であるリナロールのアルケン選択的な重水素標識体合成にも成功した。[2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : 5% Pt/カーボンビーズを充填して120度に加熱したカートリッジに、芳香族化合物を溶解した2-PrOH/D2Oの混合液を単回送液するだけで、様々な芳香環が効率良く重水素標識されることを昨年度見出している。今年度は、基質適用検討を詳細に実施し、キノリン、アデニンあるいはセロトニン誘導体などの複素環を含む化合物を、高重水素化率で多重重水素標識体に変換することができた。しかし、上記の方法では、2-PrOH/D2Oに溶解しない低極性化合物の送液は困難であった。この問題点は、低極性化合物を溶解した2-PrOHとヘプタンの混合溶媒と、D2Oをそれぞれ別のポンプで送液する事で解決し、ビフェニルやアルキルベンゼン類など様々な低極性化合物の重水素標識法を確立した。
1: 当初の計画以上に進展している
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 昨年度見出した反応条件より効率良くアリルアルコール類を重水素標識できるようになり、基質一般性も拡充した。今年度学術論文誌に公表する目処も立っているため、計画的に研究を遂行できている。[2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : 研究を前倒しして昨年度学術論文誌に公表することができた。本年度は、フロー法を基盤とした重水の再利用法の確立を目指す。
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 改良した反応条件を用いて、基質一般性を拡充する。第三級アリルアルコールを主たる基質として利用してきたが、引き続き第一級および第二級アリルアルコールの重水素化も検討する。さらに、メカニズム検討や合成した重水素標識体を基質とした官能基変換・誘導体化を実施し、実用性のあるアリルアルコール類の重水素標識法として確立する。[2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : 低極性化合物の連続フロー式反応の検討結果に基づいて、重水の再利用法も検討を開始しており、重水素化が良好に進行する条件を見出しつつある。重水に混和しないヘプタンに基質を溶解して、その溶液と重水をそれぞれ別のポンプから送液し、さらに別流路から水素ガスも同時に触媒カートリッジに移送することで重水素標識できる。今後、反応条件を最適化した後、基質一般性を拡充する。また、カートリッジ出口でヘプタン層と重水層を分離し、回収した重水を再使用するシステムの構築を目指す。
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