研究課題/領域番号 |
19J22521
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
足立 壮太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 炭鉱住宅地 / 鉱山住宅地 / 社宅街 / 住宅地計画 / 都市形成 / 縮退プロセス / 人口減少 / 持家制度 |
研究実績の概要 |
本研究は縮退先進地域としての炭鉱住宅地の縮退プロセスを明らかにすることを最終的な目的としている。しかし、縮退プロセス解明にはまず炭鉱住宅地の整備過程・特徴を明らかにする必要があり、第一年度はその点に関して特に研究を進めた。 まず福岡県大牟田市(及び熊本県荒尾市)・三井三池炭鉱、北海道釧路市・太平洋炭鉱における炭鉱住宅地の整備過程に関する一次資料を現地・三井文庫等で収集し、整理・分析を行った。その結果、三井三池炭鉱の炭鉱住宅整備過程は、炭層構造(分布・傾斜等)・地形状況(台地・丘陵・海岸微高地等)・社会背景(不況・国の政策等)の影響を受け、石炭露頭近傍開発期、西側集約期等、複数段階に分けられることを明らかにした。また、それぞれの段階に応じて、炭鉱衰退・閉山に伴い社宅街(跡地)が変容(住宅地開発・更地化等)しているとの仮説を得た。第二年度はこの仮説について検証を行う。 以上の炭鉱住宅整備過程に関する研究に加えて、上記の仮説検証とは別に炭鉱衰退・閉山後の縮退プロセスに関する研究を進めた。具体には、炭鉱衰退期以降の住宅地開発動向について、大牟田市における三井三池炭鉱及びその副次産業による持家制度(社員向けの持家取得のための融資・宅地造成・業者斡旋など)に着目しつつ、分析を行った。その結果、大牟田市の住宅地開発動向は、大きく①閉山前(1972-1986年):持家支援策に伴う戸建住宅地開発による既存市街地更新期、②閉山期( 1987-2001年):既存市街地周辺開発期、③閉山後(2002-2017年):社宅街跡地の戸建住宅地開発による既存市街地更新期、に区分されること等が分かった。尚、本結果は今後、上記仮説の検証と合わせた考察を加え、再構成する必要する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象は①社宅街形成過程・社宅街(跡地)変容過程及びそれに伴う②人口構造(特に年齢構成)の変容、に大別される。①の特に社宅街形成過程の分析には多くの一次資料の収集を必要とするが、前述の通り初年度はその資料収集を十分に行うことができ、その整理・分析を通して社宅街(跡地)変容過程に関して仮説を立てることができた。また社宅街(跡地)変容過程に関して、上記の仮説検証とは別に大牟田市(及び荒尾市)・三井三池炭鉱において行われていた持家制度に関して研究を進めることができた(もう一つの対象地である釧路市・太平洋炭鉱による持家制度については資料収集のみ行った)。 以上、第一年度の成果により、第二年度では①に関して、上記仮説の検証を軸に一次資料の更なる分析・これまでの研究結果の再構成・大牟田市と釧路市の比較を通して、研究を着実に進めていくことができると考える。また、①を着実に進めることで、並行して②に関しても着手(データ収集・分析)することが可能である。よって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度は前述の収集した資料をもとに、まず大牟田市(荒尾市)・三井三池炭鉱における①社宅街形成過程・社宅街(跡地)変容過程について、仮説の検証、これまでの研究結果(持家制度に関する分析結果等)の再構成を行う。続いて、大牟田市(荒尾市)における分析と同様の手法で釧路市・太平洋炭鉱についても分析を進め、比較・考察を行う。また①と並行して、年齢構成・世帯類型等の人口構造に関する分析を進めていく。具体には、まず大牟田市に関してはデータ収集が完了しているため、それをもとに研究を進め、その過程で分析手法について方針を固める。また釧路市については現地協力者と交渉を行い、まずデータの収集から着手する。
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