研究実績の概要 |
令和3年度では主に, (1) RNA-seq解析結果を検証するためのqPCR解析, (2) レチノイン酸を用いた培養PGCへの刺激試験, を前年度末より引き続き行なった. (1) のqPCR解析では, 標的としたメス由来PGCに特徴的な8つの因子が全て, RNA-seq解析と同等の発現パターンを有することを明らかにした. 一方 (2) の刺激試験では, オス由来培養PGCをレチノイン酸で刺激すると, RNA-seq解析で同定したメス由来PGCに特徴的な因子の発現が誘導されることを確認した. これらの成果と前年度から行なっていたRNA-seq解析から, ニワトリのPGCは, 生殖腺への定着後にレチノイン酸を介してメス先駆的な分化を生じること, およびその過程における遺伝子発現プロファイルの変化を明らかにした. 本成果は査読付学術雑誌に投稿中である他, プレプリントとしてすでに一般公開している. 加えて, 当初計画で予定していたメス由来培養PGCへのfoxl3の遺伝子改変は, 当該細胞が培養中に頻繁に分化を生じるため, 実現できなかった. そこで, この問題を解決するため, 令和3年度では (3) 培養PGCの未分化性維持機構の解明にも着手した. 本解析では, 分化したPGCを標的とした免疫染色とRNA-seq解析を行なった. その結果, PGCは分化の過程で生殖細胞としての性質を失い, 間葉系細胞様の性質を獲得することを見出した. 本成果は日本家禽学会2022年度春季大会で報告した. 今後はこの分化機構を明らかにし, さらにこの分化を抑制できる培養系を再構築することで, foxl3を含めた鳥類PGCの雌性分化関連因子の機能解析が飛躍的に発展するものと考える.
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