研究課題/領域番号 |
19J22591
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大西 信徳 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ドローン / 深層学習 / ディープラーニング / 樹種識別 |
研究実績の概要 |
1)樹冠分離手法の開発については、針葉樹に対しLiDARデータ解析の一般的な既存手法をドローンの画像から得られたデータに試し、良好な精度が得られることを確認した。一方広葉樹については開発が必要であり、深層学習が利用可能なGISソフト内で深層学習の一種であるInstance Segmentationの実装を試みたが、良い結果は得られなかった。 2)樹種識別の精度検証及びその汎用性について、撮影時の天候などの影響によるデータの質によって識別精度が落ちる課題が生じた。そこで深層学習と他の機械学習を組み合わせることで、現地の少量のデータを用いた教師無し分類・教師有り分類の仕組みを構築した。この技術により自動識別で精度が低い場合にデータの質や対象地の状況に調整したモデルの作成および識別が可能となった。またボルネオでは識別したパイオニア樹種の樹冠面積を用いて森林劣化度との関係性を調べた。結果、パイオニア樹種以外の樹種と特定のパイオニア樹種の面積が特に関係していることがわかった。 3)樹高・胸高直径の推定について、企業と共同でドローンを用いた森林調査の実証実験を行った。ドローンで得たLiDARデータとデジタル画像から樹高・胸高直径・本数・幹材積を推定し、フィールド調査結果と比較した。以前ドローンデータより作成したDEMを用いた樹高精度は高いことが確認されたが、今回は森林状況にかかわらず汎用的に使用可能であるが精度誤差が大きい国土地理院のDEMを用いた手法を採用した。結果、樹高推定はLiDARより誤差が大きくなった。一方胸高直径は一般的な式で小さい誤差で推定が可能であり、さらに現地式を作成することでより誤差を小さくすることができることが確認された。 4)ソフトウェア開発について、pythonにて樹種識別の主要なシステムの実装を行い、誰でも簡単に深層学習による樹種識別が可能なGUIを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)樹冠分離手法の開発については、予定通りには進んでいない。Instance Segmentationの実装は未だ成功せず、課題が多く残っている。 2)樹種識別の精度検証及びその汎用性について、期待以上の成果が得られている。今年度明らかになったのは特に天候など撮影時の条件が識別精度に大きな影響を与える、ということである。この課題は実際にこの技術を社会実装する際に大きな障壁となる。そこで実際の利用を想定し、現場で教師データを得てそれを利用することで精度を高める手法を開発した。この手法は深層学習と他の機械学習を組み合わせることで、少量のデータでの識別モデル作成を可能としている。これにより天候などの差異で生じた誤識別を修正することに成功した。さらにこの技術は学習していない樹種に対しても理論上適用可能であり、様々な地域でのこの技術の利用可能性が高まった。またこれまでの成果を論文として発表し、順調に進んでいる。 ボルネオでは森林劣化度との関係性が明らかとなり、ドローンから樹種識別を行うことである程度森林劣化度を推定することが可能であることが分かり、大きな示唆が得られた。 3)樹高・胸高直径の推定について、期待以上の成果が得られている。今年度の研究により推定誤差が明らかとなり、さらにLiDARの結果と比較することができ、当初の予定を達成することができた。 4)ソフトウェア開発について、順調に進展している。作成予定のソフトを独学で試作することができた。また処理速度が遅いという課題が明らかとなり、今後の開発に大きな示唆が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は樹冠分離システムやこれまで開発してきた樹種識別を含むソフトウェアの開発を行い、実用化に向けた試験的運用を国内で行うことを予定している。 1)樹冠分離手法の開発については、これまで得られたデータをもとに教師データを作成し、Instance Segmentationをエンジニアとともに開発することを予定している。開発に成功した場合精度検証を行って発表し、ソフトウェアに実装を行う予定である。 2)樹種識別については、企業とともに日本各地で実際に試験運用していく予定である。そこで生じた課題に取り組み、また得られたデータから識別モデルを改良していくことを検討している。識別モデルの改良についてはこれまでの深層学習のネットワークより高い精度のネットワーク構造を実装することを検討している。また、ボルネオのデータは結果をまとめ論文化する予定である。 3)樹高・胸高直径の推定についても、企業とともに様々な地域で試験運用することを予定している。精度やかかるコストについて現場での声をもとに実用化に向けて検討を行う。 4)ソフトウェア開発については、複数人体制で開発していくことを予定している。ソフトウェアの機能としてはドローンデータに対して針葉樹用の既存手法の樹冠分離とInstance Segmentationによる樹冠分離が可能であり、それをもとに本数・樹高・胸高直径・幹材積推定、深層学習による樹種識別を可能とする。これらの情報をGPS位置座標を含め統合的に管理できるwindows用のソフトウェアを開発し、配布パッケージ化を目指す。開発にはpythonに加え高速化のためにC++を利用する。
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