今年度は日本各地でドローンからデータを取得し、精度検証と成果発表を行った。また開発してきた技術をもとにドローンからの林分解析ソフトウェアを開発した。 1)樹冠分離手法の開発について、針葉樹林での手法を確立し実際に利用可能な高い精度で推定できることが確認できた。広葉樹林での樹冠分離では深層学習を応用し、システムの開発に成功したが、精度については今後改良が必要な結果となった。 2)樹種識別の発展及び汎用性の検証について、精度検証を企業と共同で人工林や混交林で行い、針葉樹が高い精度で識別可能であること、広葉樹の細かな樹種識別が可能であることを明らかにした。また日本各地で行った、識別可能な種の調査や時空間的に異なるデータに対する識別精度を検証した成果を論文で発表した。 3)樹高・胸高直径の推定について、企業と共同で実証実験を行った。樹高は裸地が多いなど対象地の条件が適していれば高い精度で推定が可能であり、針葉樹の胸高直径や幹材積は特に地上調査から推定式を作成することで信頼できる精度で推定が可能であることが分かった。 4)ソフトウェア開発について、windows用ソフトウェア「DF Scanner」を他研究者・技術者と共に開発に成功した。このソフトウェアでは一般的なGISソフトと同様、座標を持ったドローンのデータなどを座標に合わせて描画が可能であり、さらにドローンのデータに対する解析ツールとして各樹木の樹頂点検出、樹冠分離、深層学習による樹種識別、樹高・DBH・幹材積推定が可能である。このソフトウェアを用いることでドローンから取得したデータから専門的な技術が無くても単木レベルで林分解析が可能であり、世界中の研究者や森林管理者が広域での生態学研究や効率的な森林管理、森林保全などへ利用することができる形で研究を完成させた。
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