研究課題/領域番号 |
19J22754
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 隼斗 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 薬剤担持型バルーン / 光応答性 / 冠動脈狭窄 / 高分子ミセル / 薬剤送達 / 表面コーティング / 血液適合性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、薬剤担持型バルーン(DCB)を用いた経費的冠動脈形成術(PTCA)の効果及び安全性を向上することを目的としている。そのために、光を当てた時のみ薬剤が放出される「光刺激応答性薬剤担持プラットフォーム」を考案し、これの概念実証に成功している。現在、概念実証の次のステップとして、大別して三つの視点から研究を行っている。 1.薬剤担持プラットフォームの薬剤リリース効率のレーザ強度・時間依存性: 光応答性薬剤担持プラットフォームのモデルであるCy5-PC-Latexを用いて、薬剤リリース効率を調べた。結果、照射する光が強いほど、また、照射する時間が長いほど、残存するCy5量は少ないことが分かった。これは、照射光をコントロールすることであらゆるPTCAにおけるあらゆるニーズに応えるリリース効率が実現できることを示唆している。 2.PEG化による血液適合性の向上: 提案プラットフォームにはの表面に血栓が形成されてしまうことを防ぐために、表面に血液適合性材料であるポリエチレングリコール(PEG)を修飾した。結果、確かにPEG化により表面への血中タンパク質の吸着は減ることが分かった。 3.提案プラットフォームの実物バルーンへの搭載: 本光応答性薬剤担持プラットフォームを搭載したバルーンの治療効果等を検討するために、実際のバルーンに搭載しその光応答性等の基礎項目を評価した。そのために、バルーン表面に存在するカルボキシ基にCy5-PCを結合させ、その後光を照射した(波長365 nm、強度360 mW/cm2、長さ10 min)。照射後と照射前のバルーン表面の蛍光をin vivo蛍光イメージングシステムMaestroで評価した。結果、確かに光によって蛍光強度は減少し、モデル粒子ではなくバルーンに搭載した場合でもプラットフォームの光応答性は確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題をいくつかの実施項目に分け、順調に同時並行で進めることができている。 提案プラットフォームの薬剤放出効率の、レーザ強度や照射時間依存性等の基礎データの取得が進展したことにより、今年度からは本格的にミセルの設計や搭載を行うことができる。 血液適合性の向上については、今年度中にPEG化条件の最適化を行い、まとめて報告することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
項目1. ミセル担持型バルーンの評価機構の確立: 前年度に作成したモデルミセル担持型DCBの薬剤担持量や薬剤リリース効率といったパラメータを評価するためにの評価機構を作成する。ここでは、先行研究で用いられた評価系を基盤としつつ、外部刺激応答性やDCBの拡張に伴う薬剤 流失量を評価するための光照射機構やDCB拡張機構を搭載した独自の評価機構を設計する。 項目2. PEG化外部刺激応答性DCBのPEG担持条件の最適化: 前年度の成果として外部刺激応答性DCBの表層に生体適合性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)を導入することで (i)血液適合性の向上が期待できる (ii)PEG担持量と薬剤担持量はトレードオフの関係にあるということ が解明された。外部刺激応答性DCBが必要十分な血液適合性を具備しつつ最大量の薬剤を担持できるように、PEGの分子量や担持量の最適化を行う。 項目3.高分子ミセルの合成: N3-PEG-NH2 をマクロイニシエーターとしてβ-ベンジル-L-アスパルテートのNCA 重合を行い、ポリエチレングリコール-ポリアスパラギン酸誘導体を合成する。また、ここで合成した高分子とパクリタキセル(PTX) を混合して、PTX@N3-PM (PM:高分子ミセル) を構築する。 項目4.PTX@PM 担持型DCB の構築: 上記で確立したPTX@N3-PM と、前年度モデルミセルを用いて確立した反応手法を用いて、PTX@PM 担持型DCBを構築する。最終的には蛍光標識PTX を封入した高分子ミセルを結合したPTX@PM 担持型DCBに、項目1で作成した評価系を用いて光を照射し、溶液中に流出するミセルの量を評価する。
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