本研究課題では、外部刺激に応答して薬剤をリリースする光応答性薬剤担持型バルーン(PR-DCB)システムの物性、機能性、そして汎用性の向上を目指している。本プラットフォームのモデル系であるCy5-PC-Latexを用いた種々の実験結果より、提案手法は従来のDCBに比べておよそ87倍の薬剤送達効率を有する可能性が示唆された。一方で、1.薬剤担持上限がバルーン表層の官能基の数に依存する 2.薬剤自体の疎水性による血栓形成のリスクがある 3.PCを直接薬剤に結合することから、薬剤の失活が見込まれる、といった本システム固有の問題が浮き彫りとなった。これらの問題の解決のために、ナノキャリア(NC)に薬剤を封入し、そのNCを光開裂基でバルーンに固定する方法を提案し,その原理検証を行った。本研究では表面にアジド基を有するNCを、光開裂するANPを結合したリンカ(DBCO-PEGn-NH2)を介して、バルーン表面に留めることに成功した。また、NCのターゲット細胞への導入効率を向上させるために、cRGDfkペプチドを導入した結果,in vivo実験系にて血管内皮に高効率でCy5を送達できることを示した。 本プラットフォームの汎用性を示すために、従来のバルーンコーティング手法では不可能であった、拡散医薬の搭載を試み,ガウシアルシフェラーゼ(GLuc)mRNAを搭載したGLuc mRNA@Micelleを作成し,これをバルーンに搭載し,光照射による放出と,放出過程でミセルが崩壊しないことを確認した。核酸医薬をバルーンに搭載し効率的,安定的に送達する可能性を世界で初めて立証した。
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