ヒトP301S変異型tauを過剰発現するPS19マウスの脳を用いて、過剰リン酸化tau(hp-tau)の蓄積に関連するリン酸化α-synuclein(p-αSyn)の蓄積について検索した結果、PS19マウスの大脳や脳幹のhp-tauが沈着する神経細胞および希突起膠細胞においてp-αSynの沈着を認めた。定量解析の結果、hp-tauとp-αSynの沈着量に正の相関を認めた。また、PS19マウスのhp-tauとp-αSynが沈着する細胞において、活性型のGSK-3βの発現を認めた。ウエスタンブロッティングの結果、PS19マウスでは、非活性型のPP2Aの発現量が減少していた。以上の結果から、PS19マウスにおいて、ヒトP301S変異型tauの過剰発現に伴うhp-tau沈着の結果、GSK-3βおよびPP2Aが活性化し、内在性のマウスαSynがリン酸化、沈着することが示された。 また、鰭脚類13症例、イヌ65症例、ネコ57症例の脳を用いて、加齢に伴うAβおよびtau沈着の動物種差およびその原因について検索した結果、老齢の鰭脚類とイヌの大脳皮質にAβ40およびAβ42陽性の老人斑を認めたが、老齢ネコでは、Aβ42のみが顆粒状に沈着していた。tau proximity ligation assay(tau-PLA)を用いてtauの多量体化について検索した結果、hp-tau沈着細胞においてtau多量体の蓄積を認めた。鰭脚類、イヌ、ネコのhp-tau沈着細胞においてGSK-3βの活性化を認めた。Aβ沈着に関連してWnt/β-cateninシグナルが、鰭脚類では上方制御、ネコでは下方制御される傾向にあったが、イヌでは変化はなかった。以上の結果から、食肉目の種によって特徴的なAβおよびtau病変形成における、tau多量体およびGSK-3β関連シグナルの関与が示唆された。
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