研究課題/領域番号 |
19J22784
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
芦田 雪 札幌医科大学, 保健医療学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ICUAW / 脱神経 / 神経-筋電気刺激 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ICUAW発症の主要因であるメカニカルサイレンシングを効果的に防止する治療法を確立することである.令和元年度は,伸張性収縮(ECC)での神経-筋電気刺激(ES)が等尺性収縮(ISO)でのESと比較し,脱神経(DEN)に伴うメカニカルサイレンシングによる筋力低下をより効果的に防止するかについて検討した. 実験1として,ECC-ESの至適負荷頻度について検討するために正常ラットを用いてECC-ES負荷後の足関節底屈トルクを継時的に観察した.その結果,ECC-ES負荷の24時間後では足関節底屈トルクの低下が認められ,48時間後では認められなっかた.このことから,ECC-ESは2日に1回の頻度で負荷することが適切であることが示された. 実験2では,ECC-ESがDEN筋に及ぼす影響を検討することを目的に,ラットを坐骨神経を切離する脱神経(DEN)群,DEN筋に対しISO-ESを負荷する群およびECC-ESを負荷する群に分けた.全個体の左後肢はDEN側とし,右後肢は対照側とした.ECCはラットの足部を小動物用足関節運動装置に固定し,下腿三頭筋へのES負荷と同時に足関節を角速度20°/sで背屈させることで誘引した.ISO-ESはラットの足関節を底背屈0°で固定しESを負荷した.なお,刺激条件は刺激電圧45 V,刺激頻度100 Hz,5収縮を4回とし,2日に1回,8日間実施した.その間,ES負荷前に足関節底屈トルクを測定した.その結果,ECC-ESおよびISO-ESはともにDENに伴う足関節底屈トルクの低下を防止しなかった. 一方,我々はISO-ESを毎日負荷することで,DENに伴う筋力低下が一部防止されることを明らかにしている.したがって,DENに伴う筋力低下を防止するためには負荷強度だけではなく,負荷頻度も重要な因子であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,実験2においてECC-ESがDENに伴う筋力低下をISO-ESと比較し,より効果的に防止した場合はECC-ESの効果メカニズムを解明することを目的とした生化学的解析を行う予定であった.しかしながら,実験2において2日に1回のECC-ESおよびISO-ESはともにDENに伴う筋力低下を防止しなかった.このことから生化学的分析を行うに至らなかった.一方我々は,ISO-ESを毎日負荷することで,DENに伴う筋力低下が一部防止されることを明らかにしており,DENに伴う筋力低下を防止するためにはESの負荷頻度も重要な因子であり,ESは毎日負荷する必要があることが示唆された.以上の理由より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,我々は2日に1回のECC-ESがDENに伴う筋力低下を防止しないが,毎日のISO-ESがDENに伴う筋力低下を一部防止することを明らかにしている.このことから,運動の効果を増強させることが示されているレスベラトロール(RES)の投与とISO-ESの併用に着目し,DENに伴う筋力低下をより効果的に防止する新たな治療法の開発を目指す.
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