研究課題/領域番号 |
19J22784
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
芦田 雪 札幌医科大学, 保健医療学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ICUAW / 脱神経 / 神経-筋電気刺激 / レスベラトロール / L-NAME |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ICUAW発症の主要因であるメカニカルサイレンシングを効果的に防止する治療法を確立することである.これまで我々は,メカニカルサイレンシングを防止する手段として,神経-筋電気刺激(ES)療法に着目し,等尺性収縮(ISO)でのESを毎日負荷すると,脱神経(DEN)に伴うメカニカルサイレンシングによる筋力低下が一部防止されることを明らかにした. そこで我々は,実験1として,運動の効果を増強させることが示されているレスベラトロール(RES)と,ISO-ESの併用がより効果的にDENに伴う筋力低下を防止するかについて検討した.その結果,ISO-ES単独負荷による効果をRESは増強させなかった. また,DENに伴う筋力低下の要因の1つにDEN早期から生じる筋細胞膜の興奮性の低下が挙げられる.先行研究において,DENに伴う筋細胞膜の興奮性の低下には,筋細胞膜上に存在する神経型-一酸化窒素合成酵素(nNOS)の活性化が関与することが示されている.そこで我々は実験2として,nNOS阻害剤であるL-NAMEの投与とISO-ESの併用がより効果的に,DEN に伴う筋力低下を防止するかについて検討した.その結果,ISO-ES単独負荷による効果をL-NAME は増強させなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,実験1において,ISO-ESとRESの併用が,ISO-ES単独負荷と比較し,より効果的にDENに伴う筋力低下を防止した場合は,その効果メカニズムを解明することを目的とした生化学的分析を行う予定であった.しかしながら,実験1においてRESはISO-ESによるDENに伴う筋力低下の抑制効果を増強させなかった.このことから,生化学的分析を行うに至らなかった.一方我々は,DEN早期から生じるnNOSの活性化による筋細胞膜の興奮性の低下に着目し,nNOS阻害剤であるL-NAMEの投与とISO-ESの併用がより効果的に,DENに伴う筋力低下を防止するかについて検討した.その結果,ISO-ES単独負荷による効果をL-NAMEは増強させなかった. したがって,当初予定していたRESによる栄養療法とISO-ESの併用療法だけでなく,L-NAMEとISO-ESの併用療法の効果についても検討することができたことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,ISO-ESによる効果を最大化させるために,RESによる栄養療法またはL-NAME による薬物療法をISO-ESと併用し,その効果を検討したがいずれもISO-ESの効果を増強させないことが示された.そこで次年度にはISO-ES 療法の臨床応用を目的に,札幌医科大学附属病院のICU に入室された重症疾患患者に対しISO-ESを負荷し,その効果について検討する.
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