研究実績の概要 |
犬の腸リンパ管拡張症は腸絨毛のリンパ管が拡張、破綻しリンパ液が腸管内腔へと漏出する疾患である。本研究では腸リンパ管の可視化、腸リンパ管拡張症の病態に関与する分子の同定、リンパ管内皮細胞を用いた本疾患の原因の解明という観点から犬の腸リンパ管拡張症の病態を解明する。 腸リンパ管拡張症の症例では何らかの原因でリンパ循環の異常を生じていることが予想される。まず生体内での MRI を用いたリンパ管イメージング法について検討を行った。同一の犬で CT リンパ管造影と MRI を用いたリンパ管の描出を行い、画像を重ね合わせることで MRI により胸腹部のリンパ管 (腰リンパ本幹、乳び槽、胸管) の描出、形態学的な評価が可能なことを確認した。 リンパ管新生はリンパ管内皮細胞が遊走、増殖し新しいリンパ管を形成する一連の過程であり、リンパ循環の恒常性維持に重要な役割をもつ。病理組織学的にリンパ管拡張を伴う慢性腸炎と診断された犬の内視鏡生検サンプルを用いて、リンパ管新生に関連する遺伝子であるProx1, VEGF-C, VEGF-D, VEGF-3R (Prox1: prospero related homeobox 1, VEGF: vascular endothelial growth factor)の発現量をReal-time PCR により定量した。結果としてはいずれの遺伝子においても健常犬と比較して発現量に有意な差は認められなかった。 腸リンパ管拡張症の犬ではリンパ管内皮細胞に異常を生じている可能性が考えられる。まず今年度はラット胸管にカニュレーションを行うことでリンパ管内皮細胞を分離、培養する手法を習得した。
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