研究課題/領域番号 |
19J22920
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 迪大 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ウェルビーイング / 所属欲求 / 食欲 / 社会的排斥 |
研究実績の概要 |
本年度は所属欲求と食欲の一方の充足/非充足状態の変化が他方の欲求充足に与える影響を検討した。所属欲求は人であれば多かれ少なかれ持っている欲求であり、一時的で状態的な所属欲求と比較的持続する特性的な所属欲求に分けられる。一時的な所属欲求の程度は、他者からの排斥や他者との葛藤などで非充足状態に陥ることが知られている。他方、特性的な所属欲求は目標として働くことが知られている。そこで、一時的な所属欲求が食欲に及ぼす効果を、特性的な所属欲求という長期的目標が調整することを検討した。(1)最初に99名の大学生・大学院生(男性54名、女性45名)を対象に実験を行った。実験ではサイバーボール課題を用いて一時的な所属欲求が排斥操作され、参加者は一週間以上あけて所属欲求を非充足状態にする排斥条件と充足状態にする受容条件両方に参加した。課題後はボウルに入ったたまごボーロを3分間好きなだけ食べるように指示された。実験の最後に、特性的な所属欲求を測定された。その結果、特性的な所属欲求が低い参加者で、受容された時に比べて排斥された時に摂食量が増加した。(2)調査を用いて同様の現象が日常生活においても確認されるかを検討した。大学生199名(男性66名、女性133)を対象に、最近の対人葛藤、暴食傾向、特性的な所属欲求を測定した。その結果、対人葛藤が多い場合、特性的な所属欲求が高い人の方が暴食傾向が高いことが明らかとなった。このことは、実験室のような一回限りの状況下では、特性的な所属欲求が低いと一時的な所属欲求が非充足状態になることで他の欲求である食欲も非充足状態になり、日常生活のような繰り返される対人葛藤の場合は、特性的な所属欲求が高いと一時的な所属欲求が非充足状態になることで食欲が非充足状態になるという、連鎖的にウェルビーイングが低下するメカニズムが生じることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は1件の実験と1件の調査を行うことにより、一時的な所属欲求の変化が食欲に及ぼす影響を調整するメカニズムについて理解することが出来た。また、両研究ともに現在論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今まで観察された所属欲求と食欲の関係性についてメカニズムをより詳しく明らかにする。特にどのような要因が媒介しているのか、実験室で観察される一回限りの所属欲求の低下と日常生活で観察される反復的な所属欲求の低下の効果の違い、そしてこれまでの研究の説明力の限界がどこに存在するのかを明らかにすることで精緻な議論を行えるようにする。また、所属欲求の充足時における食欲の充足/非充足の検討、および食欲の充足時における所属欲求の充足/非充足の検討も行う。
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