研究課題/領域番号 |
19J22927
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 睦 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 運動制御 / TMS / 体幹筋 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下に焦点を当てて研究を実施した。 (1)経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた体幹筋を制御する神経活動の測定手法の確立:これまでに報告されている一次運動野内の上肢や下肢筋の支配領域に対するTMS手法を応用し、体幹筋支配領域に対してもTMSを行うことで、四肢の筋に加え、体幹筋(腹直筋や脊柱起立筋)からも運動誘発電位(MEP)を安定的に測定できることを確認した。
(2)(1)により確立した手法を用い、体幹筋制御における基礎的な神経制御メカニズムの検討:上肢に協調して活動する体幹筋に関して、TMSを用いて皮質、および皮質下機構における神経制御メカニズムを調べた。その結果、体幹筋MEPは上肢筋の収縮によって有意な変調が見られた。一方で体幹筋を制御する脊髄運動ニューロンの興奮性は上肢筋の収縮によって有意な変調は見られなかった。すなわち、体幹-上肢が神経的に相互作用するメカニズムの大部分は皮質内の神経回路によるものと考えられた。これらの結果は現在、国際学術誌に投稿し、査読を受け改訂中である。
(3)体幹筋を制御する神経機構を修飾しその機能を変調させる手法として、神経筋電気刺激が体幹筋制御機構に与える影響の検討:(1)、(2)で得た知見から、それらの体幹筋を制御する神経活動を人為的、外的に調節し、機能改善を図る手法として神経筋電気刺激が体幹筋制御機構に与える影響を調べた。その結果体幹筋に対する神経筋電気刺激を短時間与えると、体幹筋を制御する神経興奮性を高められることが明らかとなった。これらの結果は現在、国際学術誌に投稿し、査読を受け改訂中である。また、リハビリテーション科学分野における国際学会RehabWeek2019で口頭発表し、IFESS2019セッションにてVodivnik Award(学会賞)を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TMSを用い体幹筋からMEPを安定的に測定する手法を確立することができたので、それを用いて健常者を対象に体幹筋制御の基礎的メカニズムを調べる研究に取り組めた。さらにそれらの一部を論文としてまとめ国際学術誌に投稿することができた。またこれらを基に次年度からさらなる発展研究の遂行が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画においては健常者の体幹筋制御メカニズムの解明に加え、より優れた体幹制御能力を有すると推測される車椅子アスリートの体幹筋制御メカニズムを検討することで、優れた体幹制御を実現する神経機序を解明する予定であったが、パラリンピックの開催等もあり、安定的に被験者をリクルートすることが困難なことがしばしばあった。そのため健常者を対象とした基礎研究を進めつつ、健常被験者で十分に確立した手法を、適宜リクルートできた車椅子アスリートに対しても行っていくことを考えている。
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