研究実績の概要 |
本年度の研究は、M1ミクログリアにおける亜鉛トランスポーター遺伝子発現変化について調べるため、M1誘導作用のあるリポ多糖(LPS)をマウス由来ミクログリア細胞株であるBV-2に添加した。その結果、LPS添加12-18時間後におけるZIP8遺伝子の発現量が増加していた。また、LPS添加18-24時間後におけるZnT4遺伝子の発現量が低下していた。次に、C57BL/6マウス由来初代培養ミクログリアにおいてもBV-2細胞と同様に亜鉛トランスポーター遺伝子発現が変化するか否かを検討したところ、BV-2細胞とは異なり、ZIP8遺伝子はLPS添加6-24時間後において発現量が低下していた。また、ZnT4遺伝子についてはLPS添加3-6時間後においては発現量が増加し、LPS添加9-12時間後においては低下していた。これらのことから、細胞株と初代培養細胞においてLPS刺激による亜鉛トランスポーター遺伝子発現変化は異なる反応を示すことが明らかとなった。 また、M2ミクログリアにおける亜鉛トランスポーター遺伝子発現変化についても調べるため、M2誘導作用のあるIL-4を初代培養ミクログリアに添加した。その結果、ZIP7, 8, 13およびZnT1, 4, 5, 7の遺伝子発現が増加することが明らかとなった。この中でもZnT4遺伝子はIL-4添加3-24時間後までコントロール群と比べて最も顕著に増加していた。 以上の結果から、ミクログリアの極性変化に伴い亜鉛トランスポーター遺伝子発現が変化することが明らかとなった。これらの成果は、亜鉛トランスポーターがミクログリアの極性変化に関与していることを示唆している。
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