研究課題
本年度は、ミクログリアのM2/M1極性転換を誘導するため長時間の培養実験を行ったところ、昨年度までの無血清培地条件では細胞死が認められた。そこで、低血清培地を用いて再度M2ミクログリアにおける亜鉛トランスポーター遺伝子の発現変化について調べるため、マウス由来ミクログリア細胞株(BV-2)ならびにC57BL/6マウス由来初代培養ミクログリアに対しM2誘導作用のあるIL-4を添加した。その結果、両細胞で共通してIL-4添加12時間後にZIP6遺伝子の発現量がコントロール群と比較して増加していた。ZIP6は細胞膜に局在することが知られている。そこで、IL-4誘導性M2ミクログリアにおいてZIP6を介した細胞外Zn2+の取り込みがM2/M1極性転換に影響を及ぼすか否かについて検討した。具体的には、IL-4と同時にZnCl2をBV-2に処置し、IL-4処置18時間後にIL-4ならびにZnCl2を除去するため細胞を洗浄した。その後、M1誘導薬であるリポ多糖(LPS)を24時間処置することでミクログリアM2/M1極性転換を誘導し、培養液中の炎症性サイトカイン(IL-6)量についてELISA法により検討した。その結果、ZnCl2未処置群と比して、ZnCl2処置群では培養液中のIL-6が増加していた。以上の知見から、細胞外Zn2+がZIP6を介して細胞内に取り込まれ、ミクログリアM2/M1極性転換を促進していることが考えられた。
3: やや遅れている
本年度は、無血清培地から血清添加培地へと実験条件を変更したことにより、当初の予定よりは少し遅れている。しかしながら、標的とする亜鉛トランスポーターをZIP6に絞り込み、細胞外Zn2+がM2/M1極性転換後の炎症性サイトカイン産生を促進することを明らかにすることができた。
今後、ミクログリアM2/M1極性転換におけるZIP6の役割について薬理学的並びに分子生物学的手法を用いて詳細に解析を進め、これらの研究成果を論文として公表する。
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