研究課題/領域番号 |
19J23073
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
布施 拡 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素-水素結合活性化 / 含窒素ヘテロ芳香環 / 光触媒 / ラジカル反応 |
研究実績の概要 |
昨年度見出した光触媒と有機触媒を組み合わせることによる、アルデヒドを用いた含窒素ヘテロ芳香環のヒドロキシアルキル化反応の詳細な検討を行った。この変換によって得られるヒドロキシアルキル化された含窒素ヘテロ芳香環は有用な合成中間体であるとともに、それ自体がキニーネなどの生物活性物質に頻繁にみられる構造である。さらに、本反応は室温・可視光照射下、レドックスニュートラルという理想的な条件で進行する。今年度は基質の当量や反応時間などの細部について詳細に検討をすることで、医薬品や天然物誘導体などの複雑化合物への適用も可能であることを示すことができた。特筆すべき点として、従来法では困難であった高度に官能基化されたヒドロキシアルキル基の含窒素ヘテロ芳香環への導入に成功した。具体的には、ステロイド、医薬品、アミノ酸、糖などの誘導体であるアルデヒドを基質として用いることができ、対応する含窒素ヘテロ芳香環導入体を得ることができた。これは官能基許容性に優れたラジカル反応の特性を生かした結果であるという点で意義深いと考えている。今年度、本研究成果を論文化し、Chemical Science 誌に報告した(Chem. Sci. 2020, 11, 12206.)。 また、上記の研究を遂行する中で、光触媒非存在下でも、低収率ながら反応が進行するという現象を見出した。現在使用している光触媒は、不安定性やコストの観点に問題を抱えていると考えている。そこで、光触媒非存在下で反応が進行するというこの現象を一般化することで、これらの課題を解決することのできる光触媒に依存しない C-H 結合活性化法が実現できることを期待し、検討を行った。種々検討の結果、新規触媒を合成することで、収率の向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた反応形式とは異なるものの、昨年度見出した含窒素ヘテロ芳香環のヒドロキシアルキル化について詳細な検討を行い、天然物や医薬品の誘導体に適用可能であることを示すことができた。この結果は研究の目的である複雑化合物の後期誘導体化という観点において価値があると考えている。 また、光触媒非存在下での C-H 結合活性化を見出しつつある。研究計画当初は光触媒の使用は避けられない制約であると想定しており、それを打開できたことは想定以上の成果であると考えられる。 以上を踏まえて、期待以上の研究の進展があったとする。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出した光触媒に依存しない新規C-H結合活性化法についての詳細な検討を行う。一般性の高い方法論として確立すること、および、反応機構を明らかにすることに主眼を置く。 まずはすでに見出した含窒素ヘテロ芳香環とアルデヒドのカップリング反応以外の反応形式に適用することを目指す。 また、種々の分光学的手法を組み合わせることで、活性種の発生過程について明らかにする予定である。
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