研究課題/領域番号 |
19J23157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂井 健太郎 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素-水素結合官能基化 / 光触媒 / 水素原子移動触媒 / 結合弱化触媒 / 位置選択性 / ラジカル / 均一系触媒 / 有機合成化学 |
研究実績の概要 |
申請時の予定とは異なるが、前年度に見出したホウ素触媒による結合弱化現象を活用した新規触媒反応開発に取り組んだ。つまり、アルコール認識部位を検討していたところ、ボレートおよびシリケートにおいてアルコ―ルα位のC(sp3)-H結合の結合解離エネルギー(BDE)が低下することが見出された。そこで、当初の予定とは異なるが、アルコール認識部位としてホウ素やケイ素を用い、基質のアルコールとのボレートおよびシリケート形成による結合弱化現象を利用したアルコールα位C(sp3)-H変換に取り組むこととした。 採用1年目の段階でケイ素触媒を用いたアルコールα位C(sp3)-Hアルキル化を報告していたが、この反応は基質一般性の狭さが課題であった。計算によると、シリケート形成時よりもボレート形成時の方がアルコールα位C(sp3)-H結合のBDE低下度合が大きくなることからホウ素触媒を結合弱化触媒として用いた反応系が、よりよい反応系になると考えた。そこで、光触媒/HAT触媒と組み合わせたハイブリッド触媒系を検討した結果、ホウ素触媒型の新規結合弱化触媒を見出し、アルコールα位C(sp3)-Hアルキル化の開発に成功した。本反応は1級アルコールのみでなく、2級アルコールにも適応可能であった。また、アルコールα位C(sp3)-H結合よりもBDEが小さく、反応性が高い環状エーテルα位、アミドα位のC(sp3)-H結合存在下でもアルコールα位C(sp3)-H結合選択的に反応が進行した。さらに、保護セリン、ホモセリン含有ジペプチドにおいても側鎖のアルコールα位C(sp3)-H結合選択的に反応が進行しており、複雑化合物への応用可能性を示すこともできた。ホウ素触媒の反応に関しては、後述のSYNTHESIS Best Paper Award 2020の受賞につながり、特筆すべき評価を得られたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的としていたアルコール認識部位を有するHAT触媒を用い、基質認識による触媒活性スイッチを鍵とした方法論を活用し、アルコールを基質とした位置選択的なC(sp3)-H官能基化は現時点で達成できていない。一方、採用1年目に計算化学を活用したアプローチによって見出したケイ素触媒、ホウ素触媒とアルコールのアニオン性高配位種(シリケート、ボレート)形成による結合弱化現象を活用したアプローチによるアルコールを基質とした位置選択的なC(sp3)-H官能基化反応は採用2年目時点ですでに2報を国際誌に報告している。発表論文自体もMost Accessed Articleとして注目されたり、SYNTHESIS Best Paper Award 2020受賞につながったりしており、特筆すべき評価を得られている。 以上の状況を踏まえ、当初の想定とは異なる方向性ではあるものの、「アルコールを基質とした位置選択的なC(sp3)-H官能基化反応」という観点では順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
大きく分けて2つの方向性で研究を推進する。1つ目の方向性は当初の目的に沿うものである。つまり、アルコール認識部位としてトリフルオロメチルケトン以外にホウ素やケイ素も検討候補に加え、HAT触媒構造へと組み込むことで当初の計画の通り基質認識による触媒活性スイッチを鍵とした位置選択的なC(sp3)-H変換開発に取り組む。2つ目の方向性として、研究進展中に見出した上述のシリケート、ボレート形成による結合弱化現象を活用した新規触媒反応開発にも取り組み、反応様式の拡張、生成物の多様化を目指す。
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