研究課題/領域番号 |
19J23179
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根本 侑 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / タウたんぱく質 / タウ伝播 |
研究実績の概要 |
1.異常タウ取り込み過程に特異的に関与する分子の網羅的解析について 前者については、まず、異常タウ取り込みに関与する分子としてADリスク因子であるBIN1に着目し、培養細胞を用いた取り込み評価系の構築に着手した。遺伝子介入が容易な神経系培養細胞であるNeuro2a細胞に対しBIN1のノックダウンと過剰発現を行い、タウ取り込みに影響を与える影響を検討したところ、有意な差は見られなかった。加えて、タウ伝播をin vivoで評価する系の構築も行った。先行の論文を参考に、マウス脳に異常タウのインジェクションを行ったところ、インジェクション部位および神経系の投射先でタウの蓄積病態が確認された。またこのタウ蓄積病態の広がりは、インジェクションする異常タウの量と、インジェクション後の時間に依存することも確認された。これらの結果から、in vivoタウ伝播評価系を構築できたと考えられる。 2.タウ蓄積病理および神経細胞死に対するBIN1の影響の解析について 月齢依存的にタウ蓄積病理を示し、またタウ蓄積による神経細胞死も認められるPS19マウスと、神経特異的Bin1ノックアウトマウスを交配し、生化学的および免疫組織化学的解析を行っている。月齢ごとにタウの不溶性・蓄積量およびタウ蓄積依存的な神経細胞死を検出し、BIN1の影響について総合的に評価する予定である。海馬の強烈な委縮が観察される9ヶ月齢にいては、免疫組織化学的解析において有意な変化は観察されなかった。9カ月齢ではタウの蓄積が飽和していることが考えられたため、6ヶ月齢において検討をおこなったところ、神経特異的Bin1ノックアウトPS19マウスのいくつかの脳部位でPS19マウスより有意なタウ蓄積病理の増加が観察された。一方で、脳全体を用いた生化学的解析においては、6カ月齢のマウスのタウ不溶性について両者の間に有意な差は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞を用いた実験については、申請書の想定を基にすると、当初の想定よりもやや遅れている。 その一方で、マウスを用いた実験については、当初の予定よりも進捗状況は進展しているため、総合的に判断すると実験は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.異常タウ取り込み過程に特異的に関与する分子の網羅的解析について まだ評価系自体を改善する余地があるため、今後、系の最適化を図る。またBIN1のデータを基準とし、他の分子に対する網羅的解析につなげていく予定である。 加えて、タウ伝播をin vivoで評価する系の構築もについて、今後は、マウス脳に遺伝子介入を行い、このタウ伝播がどのように変化するかを検討していく。 2.タウ蓄積病理および神経細胞死に対するBIN1の影響の解析について 今後は、免疫組織化学的解析については例数を増やしつつ、神経細胞死についても観察していく。また生化学的解析については、脳の部位ごとに比較を行う。
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