1.異常タウ取り込み過程に特異的に関与する分子の網羅的解析についての進捗 異常タウ取り込みに関与する分子としてADリスク因子であるBIN1に着目した。BIN1 KOマウス由来のプライマリーニューロンやグリアを用いて、異常タウ取り込みにおけるBIN1の寄与について解析した。結果プライマリーニューロン単独時はBIN1ノックアウトによりタウ取り込みが減少した。一方プライマリーニューロンとグリアの共培養系においては、BIN1ノックアウトによりタウの取り込みが上昇した。つまりBIN1は異常タウの取り込み過程に対し、神経細胞では正に制御し、グリア細胞では負に制御しており、細胞種毎に機能が異なることが示唆された。 2.タウ蓄積病理および神経細胞死に対するBIN1の影響の解析についての進捗 月齢依存的にタウ蓄積病理を示し、神経細胞死も認められるPS19マウスと、神経特異的Bin1ノックアウトマウスを交配、生化学的および免疫組織化学的解析を行った。6ヶ月齢でのタウ蓄積を解析したところ、PS19マウスと比較して神経特異的Bin1ノックアウトPS19マウスでは、免疫組織学的解析によるタウ蓄積の有意な増加が観察された。また生化学的解析によっても、不溶性タウの割合の有意な増加が認められた。次に、タウ蓄積病理の広がりを規定するタウ細胞間伝播機構におけるBIN1の寄与を検討した。in vivoタウ伝播評価系を用いて検証したところ、BIN1ノックアウトマウスでは、シードインジェクションにより誘導される神経細胞内のタウの凝集が減少していることが明らかになった。すなわち、細胞自律的に生じるタウ蓄積とタウ伝播機構によって生じるタウ蓄積で、BIN1は異なる寄与を示すことが示唆された。これは、異常タウ取り込みにおける細胞種ごとのBIN1の機能の違いが影響しているのではないかと考えおり、今後より詳細に検証していきたい。
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