研究課題/領域番号 |
19J23279
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
増田 孝充 東京女子医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 医学物理 / 粒子線治療 / 陽子線治療 / PETイメージング / 体内線量推定技術 |
研究実績の概要 |
2019年度末から2020年度にかけて進めてきた不均質物質中の線量分布推定に関する研究開発は原著論文としてPhysics in Medicine and Biology誌に掲載された。また、この研究開発の過程で体内のActivity分布を高速で計算するPETシミュレーションプログラムを作成した。陽子線照射中に得られるPET画像とシミュレーションの計算結果を比較することで、リアルタイムにミリメートル精度で陽子線の飛程のズレを確認することができる。作成したプログラムは国内メーカーのPET viewerシステムに採用された。これにより、本研究成果の一部が実際の臨床に貢献できるものと期待している。 患者体内の線量分布推定には3次元のPET画像を用いる必要がある。しかしながら、従来の陽子線治療にはDual-head方式のPlanar PET装置が用いられており、限定された検出角度の計測データだけでは完全な3次元画像を得ることが困難であった。そこで、高速PETシミュレーションにより得られるActivity分布を事前情報とし、Dual-head方式のPET計測データから3次元画像を作成する手法を開発した。本手法で得られた3次元PET画像は配置した検出器面と直交する方向に弱い縞状アーチファクトが発生する。得られた3次元PET画像にガウシアンフィルタを適用することでアーチファクトの影響を低減し、線量分布推定を精度良く実行できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、当初予定していた陽子線治療施設におけるPET測定実験が実施できていない。一方で、これまでに本研究の核となる線量分布推定アルゴリズムを開発し、2編の原著論文がPhysics in Medicine & Biology誌に掲載された。また、研究開発の過程で作成した高速PETシミュレーションが国内メーカーのPET viewerシステムに搭載された。以上を総合的に評価し、現在までの研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はできるだけ早い時期に陽子線治療施設におけるPET測定実験を実施し、物理的要因によって決まる線量分布推定精度の総合的評価を行う。線量分布推定精度にはターゲットの物理情報を導出する際に用いる治療計画CT画像上のアートファクトやターゲットの設置誤差、PET画像上のノイズ、バックグラウンド成分の混入など様々な物理的要因が関係する。そこで、人体ファントムへ陽子線の治療ビーム照射とPET計測を行い、推定線量分布の総合的評価を行う。 また、人のPET画像から正確な線量分布を推定するためには物理的な情報だけでなく血流などの生体作用も考慮する必要がある。生体内における核種の生物学的半減期を組み込んだ線量分布推定アルゴリズムを開発し、陽子線治療とPET計測を同時に行った過去の臨床データに適用することで陽子線の実照射線量が治療結果に及ぼす影響を評価する。
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