研究課題
本研究では,化合物の複合アニオン組成によって電子構造における価電子帯位置を制御し,発光中心ユウロピウムイオンの特異な光物性を示す新規光機能性材料の創製を目的としている。当該年度も引き続き酸窒化物YSiO2Nに関して詳細な光物性評価に取り組み,その局所構造・電子構造が光学遷移特性にもたらす影響を調査し,報告した。[1] 酸窒化物中におけるEu3+の光物性に関して,反転中心の有無が異なる2種の複合アニオンサイトで見られる違いについて評価した。サイト選択励起スペクトル測定と第一原理バンド計算により,酸窒化物中で見られる電荷移動励起バンドの長波長シフトは,電気陰性度の小さなN3-が配位したものであることを確認した。YSiO2N:Eu3+に関する一連の測定結果・考察は,Chemistry of Materials誌に採択・掲載された。[2] これまでは酸窒化物YSiO2N中のEu3+に着目してきたが,1600度での焼成後には約半数のユウロピウムイオンが2価に還元されることがX線吸収分光により明らかとなった。さらにこのEu2+およびEu3+が共添加された酸窒化物YSiO2Nにおいて,室温以下の低温において550~1100 nmの非常に広帯域にわたる深赤色-近赤外発光を見出した。主要なEu2+添加酸窒化物蛍光体と比較しても特異的に長波長シフトした発光であり,ストークスシフトも非常に大きいことから,Eu2+束縛励起子(ETE)状態の輻射再結合に帰属される。エネルギー図から,すべてのEu2+: 5d励起準位が伝導帯下端と縮退した結果,ETE発光が観測されたことが示唆された。この結果に関して,国内学会で発表し,筆頭著者として投稿した論文がPhys. Chem. Chem. Phys.誌に掲載受理・オンライン掲載された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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physica status solidi (a)
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