私は昨年度までに、活性化後のSTINGがリソソームへと輸送されるにつれて分解され、シグナルが収束していることを見出してきた。そして、この分子機構を明らかにするために、STINGの分解に必要な遺伝子のスクリーニングを行い、候補分子を絞り込み、詳細な解析を進めてきた。さらに、超解像度顕微鏡によるSTING分解過程の詳細な観察も進めてきた。 本年度は光-電子相関顕微鏡法(CLEM法)によりSTING分解過程のさらなる観察を進めた。その結果、活性化後のSTINGは既知のオートファジー経路とは異なる新規リソソーム分解経路により分解されていることが強く示唆された。さらにスクリーニングにより同定されたSTING分解に必要な遺伝子を発現抑制した結果、CLEM法により観察されていた活性化後のSTINGの分解過程を抑制することが示された。この結果から、同定された遺伝子のSTING分解過程における詳細な寄与が示唆された。最後に、今回見出した分解経路にはSTINGの活性化後の翻訳後修飾も必要であると考え、これを明らかにすることを試みた。昨年度までにSTINGの活性化前後の相互作用タンパク質解析も実施してきたが、その際に同時に得られていたSTING自身の翻訳後修飾の解析結果を用いた。その結果、STINGの活性化後のユビキチン化が今回見出したリソソーム分解に必要であることが示された。 本研究は新規リソソーム分解経路を介した自然免疫応答の新たな収束機構の存在を示唆した。また、この分解経路はSTINGのみならず、様々なタンパク質の恒常性維持に寄与する機構である可能性が考えられる。
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