研究課題/領域番号 |
19J23352
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
片桐 啓太 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 電波伝搬 / 電波環境マップ |
研究実績の概要 |
令和元年度は主に無線環境をデータベース化したマップの更新手法および干渉電力による欠損データの外挿手法について検討した。いずれの内容も総務省委託研究の一環として取り組んでおり、我が国の将来の無線システムの在り方を根本から変革する重要な基盤技術として位置づけられている。まず、データベースの更新については、送信基地局および周辺構造物が撤去される状況を想定し、既存検討の調査および関連知識の習得を行った。本調査結果を踏まえ、確率統計学における仮説検定を用いて平均受信電力の有意差検定を行う手法を考案した。シミュレーション結果より、仮説検定を用いることで送信基地局の位置変化や周辺構造物の撤去を精度良く検出でき、該当メッシュにおける平均受信電力を正確に更新できることを確認した。同研究成果は電子情報通信学会スマート無線研究会およびDySPAN2019など複数の国内研究会および国際会議において発表を行った。また、昨年度後半からは同研究成果を学術論文誌に投稿するため、研究内容をさらに高度化し論文誌の執筆を行っている。本論文誌は令和2年6月中にIEEE論文誌に投稿予定である。次に、昨年度後半からは干渉制約下における電波伝搬外挿手法について検討を行った。本研究では、複数の送信基地局環境を想定し、周辺基地局からの干渉信号により自基地局の信号が欠損する状況を想定した。まず、関連検討・技術として、既存の欠損値代入法および外挿手法について調査を行った。本研究では、周辺端末の観測データ数に基づき欠損データ数を推定し、同データ数を加味して受信電力の経験的分布関数を補正する手法を提案した。実測データを用いたエミュレーション結果より、提案手法を用いることで外挿推定無の場合と比較し、伝搬推定精度を10dB近く改善できる事を確認した。同研究成果は本年度のSR研に投稿済みであり、今年度前期には論文誌に投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は主に、分散環境向け電波環境推定手法、電波伝搬モデルの分離手法、電波環境マップの更新手法および外挿手法について検討を行った。本検討事項には当初予定していた研究課題に加え、総務省からの委託研究の内容も加味されており,研究課題の進捗状況としては順調に進展していると考える。また、令和元年度後半からは電波環境マップ更新手法に関する研究成果を学術論文誌にまとめており、令和2年度前期中にはIEEE論文誌に投稿できるものとなっている。加えて、電波環境マップの外挿手法に関する成果についても学術論文誌に投稿する予定である。いずれの内容も令和元年度における研究成果であり、同年度における研究進捗状況としては順調であると考える。また、分散環境向け電波環境推定手法については、無線環境データベースの実装内容をDySPAN2019において技術展示を行い、Best Demo Awardを受賞していることから、同研究内容についても順調に進展しているものと考える。その他、電波伝搬モデルの分離手法についても、無線通信分野におけるコア会議IEEE VTC 2019において発表を行い、聴講者と有意義な議論を行った。令和元年度では複数の研究内容を並行して進めており、そのほとんどが国際会議および国内会議において発表されていることからも、研究課題の進捗状況としては順調であると考える。令和2年度は複数の論文誌採択が期待でき、当初の計画通りに研究活動が進んでいると考える。また、総務省からの委託研究ではダイナミック周波数割り当てに向けた実証実験が盛んに行われており、本実験により得られた実測データを効率的に活用することで、提案手法の有用性を迅速かつ正確に評価できると考えられる。これらの実証実験についても当初の計画通りに進んでおり、初年度としては概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、昨年度得られた研究成果を複数の学術論文誌に投稿する予定である。投稿内容としては、電波環境マップの更新手法に関する研究成果を想定しており、令和2年度6月中には投稿する予定である。投稿先としてはIEEE TCCNを予定している。同論文誌はコグニティブ無線分野におけるトップレベルの学術論文誌として位置づけられており、本研究成果を投稿する論文誌として適切であると考える。本論文誌の投稿が終了次第、電波環境マップの更外挿手法に関する研究成果をIEEE 論文誌に投稿する予定である。本内容については、研究内容の高度化を行った後、論文誌の執筆を開始する予定である。遅くとも、令和2年度前期中にはIEEE論文誌に投稿する予定である。投稿先はIEEE IoT Journalを予定している。その他、総務省からの委託研究の一環として、ダイナミック周波数割り当てに関する簡易伝搬予測アルゴリズムの開発および同内容に付随する実証実験、統合プラットフォームの開発などを行う予定である。簡易伝搬予測アルゴリズムの開発については、現在、1週間に1度の進捗報告会を行っており、各研究メンバーおよび他機関の担当者と共に意見交換を活発に行っている。本内容は令和2年度前期中にアルゴリズムの開発を完了させ、同年度後期には実証実験を通してアルゴリズムの有用性を評価する予定である。その後、精度評価結果を踏まえアルゴリズムの改良を行い、次年度以降の社会実装に向けて最終調整を行う予定である。本内容についても、他機関との合意が取れ次第、国際会議および学術論文誌に投稿する予定である。その他、分散環境向け電波環境推定手法についても、シミュレーションおよびデモ展示の内容を学術論文誌にまとめ、令和2年後期中にはIEEE論文誌に投稿する予定である。投稿先としては車両向け論文誌であるIEEE TVTを予定している。
|