研究課題/領域番号 |
19J23415
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
栗岡 智行 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子反応 / 高効率反応設計 / 固相電解反応 / π共役高分子 / ポリチオフェン / 高次構造 / ルイス酸 / 電子物性 |
研究実績の概要 |
本研究では、π共役高分子膜の機能化手法として期待される高分子電解反応の新展開として、固相反応である高分子電解反応の特徴を活かした反応設計に基づく、π共役高分子膜の高次構造変換、および、電子物性変換に挑戦するものである。 今年度は、高分子電解反応における基礎的な知見の蓄積を目的とし、(1)高分子電解反応における電解反応系の影響、および、(2)高分子電解反応と基質であるπ共役高分子膜の製膜条件の関係性について検討した。 課題(1)においては、電解反応系の設計による高分子電解反応の反応選択性の向上を目指した。反応選択性の向上により、高分子電解反応をπ共役高分子膜のテーラーメイド機能化法へと応用することが可能である。先行研究により報告している、電解系にルイス酸を添加するアプローチを発展させることにより、更なる反応選択性の向上を達成した。また、高分子電解反応により機能化することが難しかったπ共役高分子に対しても、本研究で確立した手法を適用することにより、機能化を達成した。 課題(2)においては、高分子電解反応におけるπ共役高分子の反応性と、膜状態のπ共役高分子膜が形成する高次構造の関係性を明らかにすることを目的とした。同一のπ共役高分子を異なる製膜条件により製膜し、高分子電解反応を行い、その時の反応率について比較した。また、より詳細な理解のため、各種製膜条件で作製したπ共役高分子膜についてX線回折測定を行い、高次構造の形成と高分子電解反応における反応率の相関性を実験的に証明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、高分子電解反応における基礎的な知見の収集を目的として、2つの研究課題を設定していたが、当初予定していた通りのペースで研究を進行することができている。特に(1)の研究課題の検討において、申請当初は予想していなかった基質に対しても高分子電解反応による機能化が可能であることを見出したことは、期待以上の成果であり、次年度以降の新しい研究課題として設定することにした。一方で、(1)・(2)の両課題において、より詳細なメカニズムについて解明するには至っておらず、これについては次年度以降に持ち越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた高分子電解反応の反応性を決定する因子に関する基礎的な知見は、基礎的であるがゆえに今後の研究を推進するうえで重要なものである。従って、今年度の知見を踏まえて、今後は、設定課題(1)・(2)についてより詳細なメカニズムについて調査し、各種反応メカニズムを解明する。また、今年度見出した手法の基質適用可能範囲を探索し、当初の計画通り、高分子電解反応によるπ共役高分子膜の高次構造、および、電子物性変換を行う。
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