研究課題/領域番号 |
19J23422
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
立木 馨大 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | SiC |
研究実績の概要 |
これまで、SiC MOS界面準位を低減するために様々な手法が報告されてきたが、現在は一酸化窒素雰囲気における高温熱処理がSiC MOS高密度界面準位低減の標準手法として広く用いられている。しかし、得られているチャネル移動度は非常に低く、SiC MOSFETの更なる性能向上のために、移動度の向上は不可欠である。
前年度の研究では、熱酸化で形成したSiC/SiO2界面に対して、窒素(N2)雰囲気下での高温熱処により、界面準位の低減を目指した。しかし、あるていど界面準位は低減するものの、大幅な低減は実現されなかった。
本年度では、SiCの熱酸化によるSiO2の形成が、高いMOS界面準位密度の起源になっていると仮説を立て、徹底的にSiCの酸化を排除した、SiC/SiO2構造の形成を目指した。その過程で、①水素エッチングによるSiC表面処理、②SiCを酸化させないSiO2の形成、③窒化処理の3つが、低い界面準位を得る重要なポイントであることを発見した。本プロセスを用いて作製したMOS構造の界面準位密度は、従来手法で作製した場合と比較して大幅に低い(1/5程度)という結果が得られた。また、MOSFETを作製し移動度を評価したところ、チャネル移動度は従来と比較して2倍以上となった。本成果が実用化された場合、600-1200V級のSiC MOSFETで、オン抵抗が約2-3割低減されると見込まれる。これにより、SiC MOSFETの実用化が更に加速すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長年問題であった界面準位の原因の一つが熱酸化であることを示し、それに基づいた新界面準位低減手法を提案した。本年度発明した新手法では、従来手法で作製したSiC MOSFETの移動度のおおよそ2倍の移動度であり、飛躍的な性能の向上に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作製したMOSFETのボディ層ドーピング密度は、一般的に広く産業応用されているMOSFETが有するボディ層のドーピング密度と比較して低い。このため、ボディ層のドーピング密度がより高いMOSFETを作製し、その特性を評価する事は実用化の観点で非常に大事である。このため、本年度は様々なドーピング密度を有するMOSFETを作製し、その電気的特性を評価する。また、従来手法で作製されたトランジスタと比較し、高い性能を発揮できるかも調べる予定である。
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