昨年度までの研究で、ボルナ病ウイルス2型(BoDV-2)の核タンパク質がボルナ病ウイルス1型(BoDV-1)の人工合成効率を大幅に向上させることを明らかにしていたが、本年度は、これらの研究成果をまとめ、国際雑誌に発表した。また、若手研究者海外挑戦プログラムを利用してドイツのFriedrich-Loeffler-Institut(FLI)に留学し、BoDV-2の全ゲノム解析と組換えウイルスBoDV-2の人工合成系を確立した。BoDV-2はBoDV-1に近縁なウイルスであるにもかかわらず、強い病原性を有している可能性が示唆されている。これらのウイルスを比較し、ボルナ病ウイルスの病原性メカニズムを明らかにすることで、BoDV-1を基盤とするウイルスベクター(REVec)の安全性の向上に寄与することが期待される。 昨年度から継続しているUniversity of Toledoとの共同研究では、BoDV-1のin vitro RNA合成系を確立し、ゲノム複製に伴う末端配列の修飾について、より詳細な解析を実施した。その結果、BoDV-1のゲノム複製がinternal de novo initiationによって開始され、感染細胞内でのゲノム複製と同様に、3'末端の数塩基が複製されないことが確認された。一方、感染細胞内のゲノムRNAは5'末端が一リン酸化されているのに対し、in vitroで合成されたRNAの5'末端は三リン酸化されていることが明らかになった。この結果から、BoDV-1が宿主因子を利用してゲノムRNA5'末端の修飾すること、また、これによって過剰な免疫応答を抑制し、持続感染を成立させている可能性が推測された。
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