研究課題
膜小胞は、細菌が死滅および分裂する際に、細菌のDNAやタンパク質等を内包しながら形成されることが知られている。それゆえ抗菌薬を使用すると、細菌が死滅し、細菌の遺伝子を含んだ膜小胞が多く放出されることが考えられる。特に抗菌薬が多く使用される畜産現場では、細菌の薬剤耐性遺伝子を内包する膜小胞が多く産生されると予測される。この膜小胞がほかの細菌へと薬剤耐性遺伝子を水平伝播伝播し、薬剤耐性菌が出現すると予想される。また、プロファージとは、宿主細菌のゲノムに取り込まれたファージゲノムである。一部の抗菌薬により、子ファージの産生が誘導される。子ファージは、複製時にはしばしば誤って薬剤耐遺伝子等宿主のDNAの一部を内包し、他の細菌へ伝播する。そのため、プロファージも畜産現場における薬剤耐性菌出現に関係していると考えられる。以上のように、抗菌薬により大量に産生された膜小胞やファージが薬剤耐性遺伝子を運搬し、薬剤耐性遺伝子を水平伝播する可能性が考えられている。これらの機構を理解することは、薬剤耐性化を防ぐ上で重要である。本研究では、豚レンサ球菌を畜産現場における薬剤耐性菌のモデルとし、膜小胞やプロファージによる薬剤耐性遺伝子伝播に関して解析を進めた。これまで、ブタから臨床分離された37株の膜小胞形成量を定量し、膜小胞高産生株2株を取得した。以降、この2株に着目し、研究を推進した。「膜小胞の産生を促進する抗菌薬の特定」を行った。本研究では、豚レンサ球菌に対し臨床現場で使用頻度の高い抗菌薬を使用し、膜小胞・プロファージの産生を亢進する抗菌薬の探索を行った。さらに、膜小胞が内包する遺伝子をメタゲノム解析を使用して解析した。養上清中に放出される頻度に関して解析を行った。一方、培養上清からのプロファージ分離・定量法を確立できておらず、プロファージが内包する薬剤耐性遺伝子の解析は行えなかった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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