本年度は、アレーンを架橋配位子に有するパラジウムナノクラスターの開発を行い、溶液中で安定に存在するアレーン-パラジウムナノクラスターが生成することを見出した。そのパラジウムナノクラスターの組成は元素分析によって同定し、分子構造は単結晶X線構造解析によって決定した。また、CV測定を行い、多段階の酸化還元挙動を示すことを明らかにした。CV測定で観測された酸化還元体が、化学的酸化還元反応によって合成できることを明らかにした。加熱条件下での反応検討から、パラジウムナノクラスターに配位したアレーン配位子が配位子交換活性を有していることを明らかにした。 本研究で合成したアレーン-パラジウムナノクラスターはこれまでに例ない錯体であり、アレーンと遷移金属クラスターとの面間配位相互作用において重要な知見を与えるものである。また、特徴的なパラジウムナノクラスターの構造を明らかにした。このことは、アレーンを架橋配位子として有する遷移金属ナノクラスターのクラスター構造の構築原理についても知見を与えるものである。
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