今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまで反強磁性磁壁の磁場による駆動と電流による駆動を調べてきた。磁場による駆動では、非一様磁場がある時に、磁壁はダンピングを通じてより磁場が強い方向へ移動することが分かった。また、磁壁位置は時間の関数として指数関数的に増加することが分かった。この奇妙な磁壁の運動はAFスピンのシミュレーションでも確かめられている。磁場による磁壁駆動の論文は査読付きジャーナルに投稿し、掲載された。[J. J. Nakane, H. Kohno, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 034702 (2021).] 次に本研究では電流による磁壁駆動を微視的モデルから調べた。まずは磁壁駆動に効くとされているスピン移行トルク、ベータトルク、ダンピングトルクを微視的計算から求め、磁壁駆動速度を微視的パラメーターから求めた。すると、磁壁速度が強磁性と比べて逆方向に磁壁が進むことが判明した。また、電流とスピン移行トルクの比が強磁性体と比べて非常に大きくなりうることが分かった。本研究の結果は、京都大学の小野先生のグループにおける実験[T. Okuno et al., Nat. Electron. 2, 389 (2019)]で調べられたフェリ磁性体の角運動量補償温度における電流誘起磁壁ダイナミクスをうまく説明している。 第三年度の研究実行計画として、本研究ではスピン移行トルクとベータトルク以外のトルク(一様成分の微分の項があるトルクなど)を調べる。また、タイトバインディングモデルにおける次近接ホッピングの効果を調べる。ほかには、磁壁以外にもスキルミオンの電流駆動を調べ、査読付きジャーナルに論文を投稿する。
|