単純ヘルペスウイルス(HSV)の治療薬として汎用されている核酸誘導体薬は難溶性であり、副作用、薬物耐性株などの問題を有している。本研究の目的は、核酸骨格以外の構造を持ち、既存薬と異なる作用機序を有する抗HSV活性化合物を探索することである。本研究では、抗HSV-1活性化合物スクリーニングを実施し、5種の抗HSV-1活性化合物を見出し、各種化合物の詳細な作用機序解析を行った。その結果、プロテアソーム阻害薬MG132が抗HSV有することを見出し、MG132はHSV-1感染におけるERKシグナルの抑制をキャンセルすることで抗HSV活性を発揮することを明らかにした。次に ERKシグナルの上流分子を解析すると、HSV-1 感染がRas-GRF2のポリユビキチン化を惹起し、プロテアソームによる分解を誘導した。しかし、HSV-1感染後にMG132処理を行うと、感染によるこれら一連の反応をキャンセルすることを明らかにし論文として発表した。さらに、8 種類のブドウ品種発酵残渣の抗 HSV 活性を評価し、ある特定品種が抗 HSV活性を有することを見出した。同定した品種残渣中に含まれる抗 HSV-1 化合物の単離と構造決定に成功し、それを VV-8 と命名した。その他にDNA染色試薬X、核酸誘導体Yおよびイオノフォア化合物Zの3種化合物が抗HSV-1活性を有することを見出し、これら化合物がウイルス蛋白質発現、細胞内ウイルスゲノム複製、ウイルス放出量を抑制することを見出した(投稿準備中)。
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