研究課題/領域番号 |
19J23613
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
池田 匠児 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 下水汚泥 / 土壌改良資材 / バチルス属細菌 / 自活性線虫 |
研究実績の概要 |
本研究は、農作物を栽培するうえで大きな問題となっている連作障害の解決のため、下水汚泥からバチルス属細菌と自活性線虫を豊富に含む土壌改良材を製造し、農作物の無農薬連作障害抑止技術を開発することを目的としている。本年度は、下水汚泥を用いた土壌改良資材におけるバチルス属細菌と自活性線虫の増殖条件の検討を行うために、下水汚泥を用いて土壌改良資材の作製を試みた。 本研究における土壌改良資材の作製材料は、バチルス属細菌接種材として下水処理場由来の脱水汚泥 乾燥汚泥を、自活性線虫接種材として市販のバーク堆肥 を使用した。また、バチルス属細菌の栄養成分であるセルロースを含むもみ殻、含水率調整材として乾燥させた牛糞堆肥を添加した。上記の材料の配合割合を変化させ、温度、pH、バチルス属細菌数および自活性線虫数を測定し、バチルス属細菌と自活性線虫が増殖する最適配合条件を検討した。 実験の結果、下水汚泥を混合したすべての試験区で、バチルス属細菌数が1E+7 CFU/g-Dry Matter (D.M.)、自活性線虫数が1E+5 頭/10g-D.M.以上となり、増殖を確認した。また、上記すべての材料を混合した試験区の自活性線虫増殖が最も速かった。下水汚泥を混合しなかった試験区において、自活性線虫の増殖が確認できなかった。このことから、下水汚泥を土壌改良資材の材料として用いたことにより、下水汚泥内のバチルス属細菌をはじめとした多くの細菌が自活性線虫の良好なエサとなり、増殖したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、下水汚泥を用いた土壌改良資材におけるバチルス属細菌と自活性線虫の増殖条件の検討を行うために、下水汚泥を用いて土壌改良資材の作製を試みた。その結果、下水汚泥を混合した試験区で、バチルス属細菌と自活性線虫の増殖を確認し、下種汚泥を用いたバチルス属細菌と自活性線虫を豊富に含む土壌改良資材の開発に成功した。また、下水汚泥を用いることにより、下水汚泥内細菌が自活性線虫の良好なエサとなり増殖したことを明らかにした。しかし、連作障害抑止効果が実証されている、し尿汚泥を用いた土壌改良資材中のバチルス属細菌と自活性線虫の特定および安定同位体を用いたトレーサー試験による自活性線虫の捕食性の確認を行うことができなかった。そのため、当初の計画通りではないが、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1年目に開発した下水汚泥を用いたバチルス属細菌と自活性線虫を豊富に含む土壌改良資材(以下、下水汚泥土壌改良資材)内のバチルス属細菌と自活性線虫を対象とし、16S rRNA遺伝子及び18S rRNA遺伝子に基づき次世代型シークエンサーによる解析を行い、優占するバチルス属細菌と存在する自活性線虫を特定する。さらに、連作障害に有効なし尿処理場の乾燥汚泥を用いた土壌改良資材(以下、し尿汚泥土壌改良資材)内のバチルス属細菌と自活性線虫に関しても同様に特定し、下水汚泥土壌改良資材との比較をう。また、1年目に実施できなかった安定同位体を用いたトレーサー実験に関しても実施し、バチルス属細菌を捕食して増殖している自活性線虫の特定も行う。 次に、し尿汚泥土壌改良資材および下水汚泥土壌改良資材において、実際に植物寄生線虫に対し有効であるか調査するために、3年目で行う実圃場試験の前段階としてポット栽培による植物寄生線虫抑制効果測定を行う。具体的には、試験用植物として甘藷を用いてポット栽培試験を行い、栽培後の根の重さ、卵のう数、植物寄生性線虫数および微生物叢を調査し、し尿汚泥土壌改良資材および下水汚泥土壌改良資材植物寄生性線虫抑制効果を評価する。これらの情報をまとめ、実圃場での連作障害抑止効果試験への足掛かりとする。
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