雨は植物への病原体感染を媒介することが知られている。我々は、植物が雨を危険因子として認識し、来る病原体感染に対する免疫応答を活性化するというと仮説を立て、それについて調査を行った。RNA-seq解析およびGene ontology解析を用いた遺伝子発現解析により、モデル植物のシロイヌナズナは雨を受けると免疫関連の遺伝子群の発現を誘導することが明らかになった。さらに、予め雨処理を行ったうえでの病原菌接種試験により、実際に病原体に対して有効な免疫を活性化することを明らかにした。また、雨は葉面に存在するトライコーム(毛状突起)を介して機械刺激として認識されることで、周辺細胞において同心円状のカルシウムウェーブを生じることを明らかにした。加えて、生じた細胞内カルシウムイオン濃度の上昇によって、カルシウムイオン依存性の転写抑制因子CAMTA3による転写抑制を解除されることで、免疫関連の遺伝子発現を誘導することを見出した。同時に、葉面への機械刺激によって生じたカルシウムイオン流入は、細胞質内のMPK3およびMPK6のリン酸化を誘導することで、機械刺激誘導性遺伝子群の発現を正に制御していることも明らかにした。これらの研究成果をNature Communicationsにて投稿論文として報告した。
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