研究実績の概要 |
本研究ではこれまでの研究成果を基盤として、癌細胞/腫瘍関連マクロファージ(TAM)/癌関連線維芽細胞(CAF)に対する三重標的化担体を作製し、癌-癌微小環境を包括的に制御可能な抗癌剤DDSの開発と難治性癌治療への応用を最終目標としている。以下に、本年度の研究により得られた知見をまとめる。 1)アルブミン2量体 ((HSA)-(Man-HSA)ヘテロ2量体, HSAホモ2量体, Man-HSAホモ2量体) 高発現株の作成:マウスを用いた体内動態解析やナノ粒子の作製を行う上で必要なタンパク量を確保するため、HSAとMan-HSAのホモ2量体 (HSA-HSA、(Man-HSA)-(Man-HSA))、2種のヘテロ2量体 (HSA-(Man-HSA),(Man-HSA)-HSA)のそれぞれのcDNAが導入されたPichia酵母発現系においてセレクションを行い、4種のアルブミン2量体の高発現株を獲得した。 2)HSA化Man-HSAの体内動態解析 (in vivo):4種類のアルブミン2量体について蛍光標識体を作製し、健常及び担癌モデルマウスに尾静脈内投与を行い血中滞留性、腫瘍及び臓器分布を測定した。また、腫瘍内に到達したHSA化Man-HSAは癌細胞/TAM/CAFへ移行しているかを確認するため、フローサイトメトリーや蛍光免疫染色により腫瘍内動態を評価した。 3)HSA化Man-HSAを用いたアルブミン2量体ナノ粒子の作製:HSA化Man-HSAの分子内ジスルフィド結合をグルタチオンにより還元後、エタノールによる脱溶媒和を介した分子間ジスルフィド結合の形成によりナノ粒子体を作製した。ナノ粒子体の粒子径ついては、作製における反応段階の条件を検討することで、粒子径の調製(30、60、100 nm)を行い、動的光散乱法により確認した。
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