研究課題/領域番号 |
19J23678
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
森崎 裕磨 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 地域防災計画 / 災害時要配慮者 / 国民健康保険データ |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震や熊本地震時に,救助,避難誘導,安否確認,避難所生活において,高齢者・傷病者・乳幼児・妊婦・外国人といった災害時要配慮者への対応が大きな課題として残った.近年,災害時要配慮者にフォーカスを当てた地域防災計画の策定が重要視されている.本研究では,上記の問題を解決した地域防災計画の普及のため,全自治体の地理・人的特性に対応した,要配慮者向けの地域防災計画策定手引書(レシピ)の開発を目指すとともに提案したレシピの有用性を実践的に検討するものである. 2019年度は,本研究で使用している国民健康保険データ(KDB)のデータ粒度の向上を行った.分析対象地である石川県羽咋市との連携によって,国民健康保険加入者の疾病情報に,「損傷部位」の情報(ICD-10区分)が追加された.また,加入者のうちで通院した病院,診療所のコード,医療点数などの情報についても追加され,疾病の重症度及び通院行動の詳細把握が実現した.以上のように,KDBデータの粒度向上によって,これまで把握が不可能であった要配慮者の身体状況,および地域の特性の把握が詳細に実施できる.また,通院行動履歴等からは,必要となる医療物資の把握が可能となり,災害時における医療供給の効率的な分配が実施できると考える. 以上のように,2019年度はKDBデータの粒度向上を図り,地域の実態把握を実施する際の可能性を向上できたと考える.2020年度以降はKDBデータに加えて,アンケート調査,BLEタグ等の他ツールを連携しさらに詳細な地域特性の把握を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
避難時において特に避難に困難を要する者の中で,整形外科系疾患を患う者がいる.昨年度の主な研究実施内容としては,データ粒度が飛躍的に向上したKDBデータの解析,整形外科系疾患患者の地域分布,および整形外科系疾患患者が避難時に見舞われる状況把握を行った.特に避難に困難を要する整形外科系疾患患者のなかで「下半身」に損傷をもつ要配慮者の地域分布を明らかにした. また,GISを用いたネットワーク解析により,各町字における避難困難度を算出し,各町字に住む整形外科系疾患患者数と避難所までの距離の関係を明らかにした.そして,各疾患の重症度を「医療点数」によって定義し,各個人の疾患重症度と,避難のしにくさの評価を行った.
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今後の研究の推進方策 |
KDBデータの羽咋市との連携のもと,町民15,000人を対象とする大規模なアンケート調査を実施し,各回答者の身体状況,災害に対する備え,意識等を広く把握する.今年度の目標としては「災害時要配慮者」の動的な情報としてBLEタグの配布,実装を通して,羽咋市に居住する災害時要配慮者の移動範囲,行動特性の把握を行う予定である.そして,各地域の特性に合った地域防災計画策定レシピの実装に向けた情報収集,および自治体との連携を強固にしていく.
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