研究課題/領域番号 |
19J23697
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
本山 智晴 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 含窒素ヘテロ環式化合物 / ピラジン / 3-エチル-2,5-ジメチルピラジン / L-スレオニン / L-スレオニン脱水素酵素 / 2-アミノ-3-ケトブチル酸CoAリガーゼ |
研究実績の概要 |
Cupriavidus necator由来L-スレオニン脱水素酵素(CnTDH)および2-アミノ-3-ケトブチル酸CoAリガーゼ(CnKBL)が関与する、L-スレオニン(L-Thr)を起点とした3-エチル-2,5-ジメチルピラジン(EDMP)生合成機構の解明を目指した研究を行った。 2020年度は、①CnTDH-CnKBLによりL-Thrから合成したEDMPのNMR分析、②13C4,15N標識L-Thrを用いた、EDMPへの取り込み解析、③In vivo条件におけるEDMP産生を行った。 ①では、大腸菌にて異種発現させ、精製したCnTDHおよびCnKBLを用いて、L-ThrからEDMPをmg単位で合成した。抽出・精製を行った後、NMRにより分析したところ、取得した化合物がEDMPであることを確認した。②では、反応に用いたL-ThrがCnTDH-CnKBLによって、実際にEDMPに取り込まれていることを確認するために、標識L-Thrを用いた酵素反応を行った。GC-MS分析の結果、標識L-Thrから産生されたEDMPの分子イオンおよびフラグメントイオンの質量が標識体化に伴い増加していることが示された。このことから、CnTDH-CnKBLが触媒する反応により、基質として添加したL-ThrがEDMPに取り込まれていることが示された。③では、tdh-kblオペロンが保存されているC. necatorにおいて上記オペロンが機能し、菌体レベルにおいてもEDMPが合成されるか確認した。富栄養培地および貧栄養培地においてL-Thrを添加してC. necatorを培養した。反応産物のGC-MS分析の結果、富栄養培地では確認されなかったEDMPに相当するピークが、貧栄養培地で培養した条件では確認された。このことから、C. necatorは貧栄養培地においてEDMPを産生することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ピラジン生合成に関与するL-スレオニン脱水素酵素および2-アミノ-3-ケトブチル酸CoAリガーゼの解析を通して、L-スレオニンを起点とするピラジン生合成機構の分子レベルでの解明に至った。さらに得られた知見を応用することで、様々な化学構造を有するピラジン化合物の化学-酵素的合成にも成功している。 L-スレオニン脱水素酵素単体の研究成果に関しては国際誌にてアクセプト済みであり、ピラジン生合成機構の解明に関する研究成果に関しては、現在国際誌に投稿中であり、今年度中のアクセプトを予定している。成果発表を含めて研究の進捗状況は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、①ピラジン合成に関与する多様な前駆体を供給することを目指したTDHの基質特異性の改変、②KBLがピラジン合成にどのように関与しているのかの解明に成功している。そこで本年度は、③多様な構造を有するピラジンなどの含窒素ヘテロ環式化合物の合成法確立を目指す。 ③の課題解決に向け、これまでに得られたTDHおよびKBLの知見を応用し、反応に用いる基質の組み合わせを様々に変えた条件にてin vitro反応を行い、ピラジンなどの含窒素ヘテロ環式化合物の合成を行う。反応によって生成される化合物に関しては、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)や液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)、核磁気共鳴(NMR)装置を用いて組成式の推測および化学構造の決定を行う。一連の研究により、化学-酵素法によるピラジンなどの含窒素ヘテロ環式化合物の合成法の確立を目指す。
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