研究課題/領域番号 |
19J23723
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
片桐 毅之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 炭素―炭素結合 / 生体触媒 / 人工補酵素 / 補因子 / 速度論解析 |
研究実績の概要 |
2019年度は、メディエータとリンゴ酸酵素が触媒する二酸化炭素導入反応での反応過程解明を中心に取り組み、その成果を学会および論文として発表した。リンゴ酸酵素に有効な独自の水溶性メディエータを設計・合成し、それを用い二酸化炭素導入過程での反応速度や触媒活性などの速度パラメータを算出し、メディエータの有効性および酵素との親和性を評価した。具体的には新規メディエータとしてビオローゲン誘導体である1,1’-bis(p-carboxyphenyl)-4,4’-bypyridinium dichloride (PCV)を設計合成した。PCVを用いてリンゴ酸酵素が触媒するピルビン酸への二酸化炭素導入過程での相互作用を酵素速度論的解析により評価した。速度論解析より、二酸化炭素導入過程であるオキサロ酢酸生成過程において多電子還元したPCVがリンゴ酸酵素の補酵素として機能することを明らかにした。さらに、PCVを用いた際のリンゴ酸酵素による二酸化炭素導入反応での速度パラメータを初めて明らかにした。酵素と基質との親和性を示すミカエリス定数を天然のメディエータであるNADPHを用いた際と比較すると同等の値を示し、PCVは有効なメディエータであることを明らかにした。さらにPCVを用いた際の二酸化炭素導入機構を提案した。このように、機能性メディエータが生体触媒にどのように作用しているのかを明らかにすることができ、触媒活性向上のための新規メディエータ設計の指針を得た。また、これらの成果を基に論文を執筆・投稿し受理・掲載された(研究代表者を単独筆頭著者、受入研究者を責任著者)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本学術振興会特別研究員(DC1)として、二酸化炭素の有機分子への導入による炭素-炭素結合生成を触媒するリンゴ酸酵素と機能性メディエータとの相互作用および二酸化炭素導入過程の反応機構の解明に取り組んでいる。この目標に向けて2019年度は、速度論解析より、二酸化炭素導入過程であるオキサロ酢酸生成過程において多電子還元したメディエータがリンゴ酸酵素の補酵素として機能することを明らかにした。さらに、メディエータを用いた際のリンゴ酸酵素による二酸化炭素導入反応での速度パラメータを初めて明らかにした。このように初年度の段階で、本研究の目的の一つである、機能性メディエータが生体触媒にどのように作用しているのかを明らかにし、既に当該研究成果が論文掲載に至った点から、区分(2)おおむね順調に進展しているが適切であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、二酸化炭素の有機分子への導入による炭素-炭素結合生成を触媒するリンゴ酸酵素と機能性メディエータとの相互作用および二酸化炭素導入過程の反応機構の解明を目的としている。2019年度は補因子の一種である補酵素とリンゴ酸酵素間の相互作用について調べた。2020年度は同じく補因子の一種である金属イオンの添加効果を検討する。一般にリンゴ酸酵素には補因子である2価の金属イオンが必要とされているが、二酸化炭素導入過程における金属イオンの影響は不明である。2020年度はまず、メディエータとしてNADPHを用い、金属イオンの種類や価数が二酸化炭素導入反応に与える影響を調べる。その後ビオローゲン誘導体を用いた際に金属イオンが酵素反応に与える影響を調べ、初年度で得られた知見も参考にリンゴ酸酵素が触媒する二酸化炭素導入過程の反応機構の解明を目指す。
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