研究課題/領域番号 |
19J30006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木全 祐資 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 胚発生 / 細胞極性 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
受精後に転写され、受精卵の極性化を担う実行因子を同定するべく、1細胞期胚を胚珠から単離してRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施した。前年度までに、胚珠からの胚の単離法を確立し、50個の野生型胚からRNA-seqデータを取得できていた。しかしながら、既知の変異体との遺伝子発現の比較を行ううえでは、毎回50個の胚を回収することは非効率的であると考えられた。 そこで、本年度はまず、少数の細胞から効率よくcDNAを合成できるSMART-seq法を導入した結果、20個の野生型胚から再現性の高いRNA-seqデータを得ることに成功した。そこで、野生型、wrky2 hdg11/12三重変異体、yda変異体と、ネガティブコントロールとして液胞の異常により受精卵が極性化できないsgr2変異体から、それぞれ複数回のRNA-seqを実施し、それぞれの変異体背景で野生型よりも有意に発現量が低下した遺伝子を探索した。 結果として、それぞれの変異体で1000個以上の遺伝子の発現量が低下していることがわかった。そこで、既知経路の下流因子の候補を絞り込むべく、wrky2 hdg11/12三重変異体とyda変異体で共通して発現低下し、sgr2変異体では発現低下しない遺伝子に注目したところ、300個程度まで絞り込めた。さらに、先行研究で受精後に発現上昇することがわかっている遺伝子絞り込んだうえで、遺伝子の上流に既知因子の結合配列をもつ遺伝子に注目した結果、60個程度の候補遺伝子群を得た。これらの中には、wrky2 hdg11/12三重変異体で発現量が大きく低下することが知られているWOX9が含まれていたことから、今回同定された候補遺伝子群の中から、未知の極性化の実行因子を同定可能であると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受精後に活性化される既知のシグナル経路で転写され、受精卵の極性化を担う実行因子を同定するべく、1細胞期胚を胚珠から単離してRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施した。前年度までに、胚珠からの胚の単離法を確立し、50個の野生型胚から信頼できるRNA-seqデータを取得できていた。しかしながら、変異体との遺伝子発現の比較を行ううえでは、毎回50個の胚を回収することは非効率的であると考えられた。 そこで、本年度はまず、少数の細胞から効率よくcDNAを合成できるSMART-seq法を導入した結果、20個の野生型胚から再現性の高いRNA-seqデータを得ることに成功した。そこで、野生型、wrky2 hdg11/12三重変異体、yda変異体と、ネガティブコントロールとして液胞の異常により受精卵が極性化できないsgr2変異体から、それぞれ複数回のRNA-seqを実施し、それぞれの変異体背景で有意に発現量が低下した遺伝子を探索した。 結果として、それぞれの変異体で1000個以上の遺伝子の発現量が低下していることがわかった。そこで、下流因子の候補を絞り込むべく、wrky2 hdg11/12三重変異体とyda変異体で共通して発現低下し、sgr2変異体では発現低下しない遺伝子に注目したところ、300個程度まで絞り込めた。さらに、先行研究で受精後に発現上昇することがわかっている遺伝子絞り込んだうえで、遺伝子の上流にWRKYファミリーやHDGファミリーの結合配列をもつ遺伝子に注目した結果、60個程度の候補遺伝子群を得た。これらの中には、wrky2 hdg11/12三重変異体で発現量が大きく低下することが知られているWOX9や、受精卵の極性化に関わることが報告されているZAR1が含まれていたことから、今回同定された候補遺伝子群の中から、未知の極性化の実行因子を同定可能であると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度に同定できた候補遺伝子群から、既知の組織ごとの遺伝子発現データベースの情報やアノテーションを参考に、興味深い候補遺伝子群を10個ほど選抜した。これらの蛍光タンパク質融合マーカーを導入して受精卵での細胞内局在を観察し、さらに興味深い動態を示したものについては、欠損株を入手して表現型を調べる。欠損株が確立されていないものについてはゲノム編集によって、新たに欠損株を作出する。
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