受精後に活性化される既知のシグナル経路で転写され、受精卵の極性化を担う実行因子を同定するべく、1細胞期胚を胚珠から単離してRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施した。まず、少数の細胞から効率よくcDNAを合成できるSMART-seq法を導入し、より少数の胚からのRNA-seqを実現することを目指した。cDNA合成のサイクル数やシーケンスライブラリーの濃縮のサイクル数を微調整した結果、20個の野生型胚から再現性の高いRNA-seqデータを得ることに成功した。そこで、野生型、wrky2 hdg11/12三重変異体、yda変異体から、それぞれ複数回のRNA-seqを実施し、それぞれの変異体背景で野生型よりも有意に発現量が低下した遺伝子を探索した。 結果として、wrky2 hdg11/12三重変異体で発現低下する遺伝子に注目したところ、200個程度まで絞り込めた。さらに、先行研究で未受精の卵細胞と比べて、受精後に発現上昇することがわかっている遺伝子絞り込んだ結果、20個程度の候補遺伝子群を得た。これらの中には、wrky2 hdg11/12三重変異体で発現量が大きく低下することが知られているWOX9が含まれていたことから、今回同定された候補遺伝子群の中から、未知の極性化の実行因子を同定可能であると期待できる。
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