本研究ではマイクロウェア(歯に残る摂食時の微細な痕)の三次元的解析により哺乳類等の食性進化を解明する事を目指した。コロナ禍の影響もあり海外で調査ができず、標本が取得可能な対象を用いて研究成果を出す事に注力した。結果として恐竜などの爬虫類のマイクロウェアに関する成果が多く出る事となった。 現生生物の給餌実験によるマイクロウェアと餌の関係を解明する研究としては、Daniela E. Winkler博士によりドイツで給餌実験が行われたラットのマイクロウェアについて、餌の物理特性の関係を調べる研究を進めた。食感試験機JSV-1000とHF-100を購入し、ラットに与えた餌であるコオロギ、ヒヨコ、パパイヤ、ヒヨコ豆等のヤング率を計測した。 マイクロウェアから絶滅生物の古食性を推定する研究としては、岩手県久慈市から産出する白亜紀後期の竜脚類恐竜を現生トカゲのマイクロウェアと比較する研究を進めた。比較対象がトカゲではあったが、竜脚類が貝殻のような硬いものは食べず、一方で肉や卵よりは硬いものを食べていた事、彼らが草食であったという従来の推定と整合性の高い草食トカゲとの類似性が明らかとなった。当たり前の結果のようではあるが、竜脚類の食べていたものの硬さについて定量的に検証した研究は世界で初めてであり、また恐竜のマイクロウェアの三次元解析も世界初の試みである。草食恐竜である鳥脚類の三次元マイクロウェアの植物相の変化に応じた時代変化についても私が中心となって研究を進めている。これらの成果は、おそらく今年度中に論文化できると考えている。
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