研究課題/領域番号 |
19J40004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
諸隈 佳菜 東京大学, 大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 銀河団 / 銀河進化 / 星間物質 / 星形成 / 環境効果 |
研究実績の概要 |
2020年度は、研究対象の近傍銀河団の中でも、主におとめ座銀河団のデータ解析・論文執筆を行った。おとめ座銀河団は、銀河団にしては星形成をしている銀河が比較的多く、今まさに銀河団における環境効果の影響を受けている銀河が多くいると期待される。我々はおとめ座銀河団銀河の低温ガス(原子・分子ガス)、星質量、星形成率の世界最大規模のデータベースを構築し、銀河団銀河の低温ガスと星形成の性質をフィールド銀河と比較し、また、銀河団銀河のこれらの性質の、銀河団中心からの距離、銀河数密度、位相空間上での分布位置(銀河が銀河団に落ちてきた時期の指標)に対する依存性を調査した。その結果、(1)おとめ座銀河団銀河は、フィールド銀河と比べて星形成活動性が低く、低温ガスの量が少ないものの、星形成効率は高いこと、(2)星形成活動性が低く、低温ガスの量が少ない銀河は、銀河団中心近く・銀河団数密度が高い所に多く、またより昔に銀河団に降着してきたものが多いこと、(3)星形成効率は銀河団中心からの距離・銀河数密度・位相空間上での分布位置に依存しないことを明らかにした。これらの結果は、銀河団の場所や落下してからの経過時間によって重要な星形成抑制プロセスが異なる可能性は棄却しきれないが、特に星形成のタイムスケール(~10億年)よりも短い時間スケールで働く環境効果(例えばラム圧により低温ガスの剥ぎ取り)が、メンバー銀河の星形成活動性の抑制に寄与していることを支持する。この結果をまとめた論文はThe Astrophysical Journalに受理されている。 なお、ろ座銀河団銀河に対しても、同様の解析をALMAのデータを使って進めており、おとめ座銀河団との比較論文をまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の世界的流行で利用している保育園が登園自粛となった期間があったことと、妊娠に伴うつわり等により、作業効率が半分以下に落ちている(2021年3月より研究中断)。また、ALMAの観測が中断され、予定されていた一部の観測が遂行されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
出産に伴い、2021年3月1日から2021年10月31日まで研究中断予定である。11月1日の研究再開後は、ろ座銀河団のALMAデータ論文と、ろ座銀河団とおとめ座銀河団の比較論文の執筆作業を再開する。
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