研究課題
「ろ座」銀河団銀河のALMAデータを解析し、論文執筆作業を進めた。「ろ座」銀河団は、おとめ座銀河団と比べて、質量が小さく、銀河団ホットハローガスから放射されるX線の強度が弱い、という特徴を持っている。そのため、おとめ座銀河団と比べて、銀河団ホットハローガスから受けるラム圧の影響が小さいと考えられている。ALMAデータ解析の結果、以下の結果が得られた:[1]普通の環境にいる銀河(以降、フィールド銀河)と比べて、星質量に対する分子ガスの質量の比(M_H2/M_star)が小さい、[2]星形成銀河の主系列に対して、星形成率(SFR)が低い「ろ座」銀河団銀河は、同程度の星形成率の低さをもつフィールド銀河と比べて、M_H2/M_starが小さく、星形成効率(SFR/M_H2)が高い、[3]周辺の銀河個数密度が高い銀河ほど、M_H2/M_starが小さい、[4]銀河団中心からの距離と銀河団に対する速度を掛け合わせた量(銀河団への落下時期の指標)が小さい銀河(より昔に銀河団に落ちてきた銀河)ほど、M_H2/M_starが小さい、[5]銀河の半径に対する潮汐半径の比(r_tidal/r_gal)が小さいほど、M_H2/M_starが小さく、SFR/M_H2が高い、[6]M_H2/M_star比は、銀河団への落下時期に最も強く依存する。これらは、「ろ座」銀河団において、SFR/M_H2よりも、M_H2/M_starが低くなることが銀河の星形成抑制に効いていること([1]より)、ガスの消費/剥ぎ取りのタイムスケールが普通の星形成銀河のガスの消費のタイムスケールより短いこと([2]より)、銀河同士より銀河団-銀河の相互作用の方が重要であること([3][4][6]より)、銀河団-銀河の相互作用により、SFR/M_H2が高くなり、ガスの消費を促進した可能性([5]より)を示唆する。
4: 遅れている
COVID-19の世界的な流行により、自治体の保育所の学級閉鎖や子供の登園自粛により、思うように研究が進められなかった。
COVID-19の感染者数が比較的少なくなる、春から秋にかけて集中して研究を進める。特に「ろ座」銀河団の論文は早急に投稿し(5月中)、本課題のメインゴールである、複数の銀河団での比較論文を急ぎ執筆する。
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Astronomy & Astrophysics
巻: 656 ページ: A45~A45
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