研究課題
2022年度は、ろ座銀河団のデータ解析・論文執筆を行った。ろ座銀河団は、おとめ座銀河団の次に、我々の近傍に位置する銀河団で、おとめ座銀河団と比べると質量は小さい、銀河団ガスは少ない、銀河団中心領域の銀河の数密度が高い、という特徴を持つ。おとめ座銀河団との比較を通して、銀河団で働く環境効果の多様性を調べる上で、重要な研究対象の一つである。我々はALMA望遠鏡を用いて、ろ座銀河団銀河64天体に対する、世界最大のCO(J=1-0)輝線(以下、CO輝線)サーベイ観測を行い、アーカイブデータと併せて、銀河団銀河の低温ガス(原子・分子ガス)と星形成の性質を調査した。具体的には、2021年度に発表したおとめ座銀河団に対する研究と同様に、フィールド銀河との比較、銀河団銀河の低温ガス・星形成の性質と、銀河団中心からの距離、銀河数密度、位相空間上での分布位置(銀河が銀河団に落ちてきた時期の指標)との関係を調べた。その結果以下を明らかにした:(1)ろ座銀河団銀河の低い星形成活動性は、低温ガスから星への変換効率が低いからではなく、低温ガスの量が少ないことに起因すること、(2)星形成活動性の低い、つまり、低温ガスの量が少ない銀河は、フィールド銀河と比べると特に原子ガス質量が減少していること、(3)星形成活動性が低く、低温ガスの量が少ない銀河は、銀河団中心近く・銀河団数密度が高い所に多く、またより昔に銀河団に降着してきたものが多いこと、(4)一方で、銀河の星形成効率は銀河団中心からの距離・銀河数密度・ 位相空間上での分布位置に依存しないこと。これらの結果は、ろ座銀河団においては、銀河団ガスからのラム圧と、銀河-銀河間や銀河-銀河団間の潮汐力により、分子ガスの材料となる原子ガスが剥ぎ取られ、星形成の直接の材料となる分子ガスの形成が抑制され、その結果、銀河の星形成活動性が低下した、と考えると辻褄が合う。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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